わたし

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 マンションの鍵を閉め、ポストに入れ、エレベーターへと向かった。階段よりもエレベーターの方が速く一階につける。早く貴方と離れられる。ピンポンという音が聞こえて、エレベーターの扉が開くとわたしはカラカラとスーツケースを転がしながら外に出た。  消えかけた街灯。薄い青空。朝まで飲んだ酔っ払い。閉まるシャッター。野良猫。遠出する自動車たち。そのどれもが、何故か新鮮に見えた。貴方と一緒にいた時とは違った世界。これが別れた後の景色なのだろうか。一人になった景色なのだろうか。呪いから解放された景色なのだろうか。 「綺麗なのかな……」  わたしはそう呟くと、取り合えず実家へと足を早める。貴方がわたしの後を追ってくるなんて考えては無いけれど、でも何となく貴方が後ろにいるような気がして、足を速めた。  嘘つきは嫌いだ。大嫌いだ。嘘は人を傷つけるし、自分までもを傷つける。他人と自分、両方を傷つけてまで嘘をつくメリットは何なのだろう。貴方が口癖のように言っていた「愛してる」も、今じゃ全く心に響かなくなるのに。  薄っすらと太陽が顔を出し、段々と空を昇っていく。月が隠れるように姿を消し、そして空も水色が塗られたように明るくなった。  駅に着くと、改札を通りながらゆっくり、ゆっくりと歩いた。大分スピードを緩めて、もうここには来ないことを噛み締めるように。いや、もう来ないは可笑しいか。だって荷物を取りに戻ってくるからね。でも、それはただの作業であって、もうわたしは貴方の為にここに来ることは無い。  もう
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