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「季生くんは、大丈夫だった。…から、もしかしたら、出来るかもしれないと思った」
我ながら最低だけど。
季生くんには触れられても平気で、むしろ気持ち良くて、だから嬉しかった。だまし討ちみたいな形になってしまって、季生くんにはなんてお詫びをしたらいいのか分からない。
「…お前。それ、わざと言ってんじゃねえだろうな」
「…わざと?」
季生くんは私の髪を弄んでいた手を止めると、大きくため息を吐き、そのまま私の頭を引き寄せてキスした。
え、え、えっ
なんでキスした?
「…分かった。セラピー彼氏になってやる」
…セラピー彼氏??
季生くんの瞳が暗闇の中で不敵に光る。
「要は、出来るようになりゃいいんだろ? 俺がお前とやって、お前がダメなわけじゃないって証明してやる」
目の前の最上級イケメンが何を言ってくれたのか、すぐには理解出来なかった。
お前とやって、…って、めっっっちゃ軽く言ったけど。つまり、その。営みを営めるように、レクチャーしてくれるってこと!?
「…ほ、ホントに!? こんな面倒臭い女に関わるんじゃなかったとか、思ってない?」
「…思ってねえよ」
ふ、と軽く口の端を上げて私の頭をポンポン撫でる季生くんは、天使だ。天使がいる。
「…ちょっとだけしか」
あれ、悪魔か?
「俺、そっち方面得意だし。どうせしばらく他の女と出来そうにねえし。まあ、暇つぶしにゆりのの相手してやってもいい」
季生くんんんん――――?
なんか今、さりげにゲスい発言しなかった?
悪魔? 悪魔なの? 小悪魔?
いや、でも。
季生くんがどんなに節操がなくとも、ゲスでもクズでも悪魔でも。私にとっては天使の申し出に違いない。
季生くんのこの麗し過ぎる見た目を考えたら、嫌でも女の子が寄ってくるんだろうし、そういう経験が腐るほどあるのも自然の流れと言うものだろう。
だから、まあ、…
「…ありがとう、ございます、…?」
ここは感謝すべきだよね。
「…スパルタだけどな」
季生くんは思わせぶりな笑みを見せると、私を引き寄せて首筋に顔をうずめた。
「え、…って、痛ったああああっ!!」
なんか噛まれた!? スパルタってか、狂犬!?
「き、季生くん、っ!?」
「ん〜?」
涙目になってしまった私などお構いなしに、季生くんは首筋を眺めて満足そうだ。
「…あの、今更だけど。季生くんは、なんでここに来たの?」
この極上イケメンな季生くんなら、泊めてくれる女の子なんて山ほどいるだろうに、なんでわざわざ私なんかの所に来たんだろう。ずっと会ってなかったし連絡も取ってなかったのに。
「…ん。じゃあまあ、とりあえず、寝るか」
はぐらかされた!?
「季生くんっ!?」
「…うるさい」
季生くんは私を胸に抱き寄せたまま、柔らかい唇で触れて、甘い舌で一切の思考能力を奪う。絡まって翻って奥深くまで侵される。弄ばれて込み上げて解けてく、…
息も絶え絶えの私を抱いたまま、余裕で欠伸をして、季生くんが目を閉じた。この先生、相当遊んでる、…もとい、相当スキルが高い。
「…おやすみ」
って、寝れるか、こんな状態で―――――っっ
と思っていたのに、怒涛の夜の反動か、天使の寝息の影響か、久しぶりに感じた人の温もり故なのか、いつしか温かくて心地よい眠りに落ちていた。
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