one more. 1

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「季生くんは、大丈夫だった。…から、もしかしたら、出来るかもしれないと思った」 我ながら最低だけど。 季生くんには触れられても平気で、むしろ気持ち良くて、だから嬉しかった。だまし討ちみたいな形になってしまって、季生くんにはなんてお詫びをしたらいいのか分からない。 「…お前。それ、わざと言ってんじゃねえだろうな」 「…わざと?」 季生くんは私の髪を弄んでいた手を止めると、大きくため息を吐き、そのまま私の頭を引き寄せてキスした。 え、え、えっ なんでキスした? 「…分かった。セラピー彼氏になってやる」 …セラピー彼氏?? 季生くんの瞳が暗闇の中で不敵に光る。 「要は、出来るようになりゃいいんだろ? 俺がお前とやって、お前がダメなわけじゃないって証明してやる」 目の前の最上級イケメンが何を言ってくれたのか、すぐには理解出来なかった。 お前とやって、…って、めっっっちゃ軽く言ったけど。つまり、その。営みを営めるように、レクチャーしてくれるってこと!? 「…ほ、ホントに!? こんな面倒臭い女に関わるんじゃなかったとか、思ってない?」 「…思ってねえよ」 ふ、と軽く口の端を上げて私の頭をポンポン撫でる季生くんは、天使だ。天使がいる。 「…ちょっとだけしか」 あれ、悪魔か? 「俺、そっち方面得意だし。どうせしばらく他の()と出来そうにねえし。まあ、暇つぶしにゆりのの相手してやってもいい」 季生くんんんん――――? なんか今、さりげにゲスい発言しなかった? 悪魔? 悪魔なの? 小悪魔? いや、でも。 季生くんがどんなに節操がなくとも、ゲスでもクズでも悪魔でも。私にとっては天使の申し出に違いない。 季生くんのこの麗し過ぎる見た目を考えたら、嫌でも女の子が寄ってくるんだろうし、そういう経験が腐るほどあるのも自然の流れと言うものだろう。 だから、まあ、… 「…ありがとう、ございます、…?」 ここは感謝すべきだよね。 「…スパルタだけどな」 季生くんは思わせぶりな笑みを見せると、私を引き寄せて首筋に顔をうずめた。 「え、…って、痛ったああああっ!!」 なんか噛まれた!? スパルタってか、狂犬!? 「き、季生くん、っ!?」 「ん〜?」 涙目になってしまった私などお構いなしに、季生くんは首筋を眺めて満足そうだ。 「…あの、今更だけど。季生くんは、なんでここに来たの?」 この極上イケメンな季生くんなら、泊めてくれる女の子なんて山ほどいるだろうに、なんでわざわざ私なんかの所に来たんだろう。ずっと会ってなかったし連絡も取ってなかったのに。 「…ん。じゃあまあ、とりあえず、寝るか」 はぐらかされた!? 「季生くんっ!?」 「…うるさい」 季生くんは私を胸に抱き寄せたまま、柔らかい唇で触れて、甘い舌で一切の思考能力を奪う。絡まって翻って奥深くまで侵される。弄ばれて込み上げて解けてく、… 息も絶え絶えの私を抱いたまま、余裕で欠伸をして、季生くんが目を閉じた。この先生、相当遊んでる、…もとい、相当スキルが高い。 「…おやすみ」 って、寝れるか、こんな状態で―――――っっ と思っていたのに、怒涛の夜の反動か、天使の寝息の影響か、久しぶりに感じた人の温もり故なのか、いつしか温かくて心地よい眠りに落ちていた。
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