1.“祝?”初同棲

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 火事に遭って行くところが無くなった私を、修平さんは自分の家に置いてくれた。  階段から落ちた私を助けて足を捻挫した彼のために、飼い犬のアンジュ(三歳のフラットコーテットレトリバーの女の子)のお世話と、家事の手助けをすることを大義名分に、私は彼の家に居候させてもらうことになったのだ。  その後も小さなハプニングを乗り越えて、私の両親の許可も下りた今、独り暮らしをしていたアパートから彼の家に引っ越すことに。  とはいえ、家電類は全滅だし、愛蔵の本達も無残に濡れてしまってダメになってしまっている。  私が持ち出すことにしていたのは、クリーニングに出せば着れそうな洋服、お気に入りの食器や調理器具、思い出の品――ぐらいのものだった。  残ったものは後日まとめて業者が処分してくれるように、修平さんが手配してくれた。  「こんなに少なくて大丈夫?」  案の定、荷物の少なさに修平さんが心配している。  「うん。すぐに必要なものは前に運んだし、そもそも生活するのに必要な物は、みんな修平さんの家にあるでしょ?」  彼の家は高級住宅街にある大きな一軒家で、ゲストルームも数部屋あるくらいに広いから、私の荷物を置いておく場所に困ることはない。  けれど、余分な荷物を持っていくのは私の性分に合わない。  「それに……、私が実家から持って来た荷物のほとんどは、『本』だったから……」  「そっか…、こんなに沢山、残念だったね……」  水浸しになった痕跡が残る本棚を、二人一緒に見上げる。  そこには、私が昔から愛読してきた小説がシリーズでいくつも並べてある。もちろん『橘ゆかり』の本も。  「俺の部屋の本棚にも同じものもあるし、杏奈の好きに読んでいいからね」    「ありがと、嬉しいよ。修平さんちには書庫もあるんだよね!今度ゆっくり見てみたいな」    「いつでもどうぞ。……っていうか、杏奈」  太すぎず整った眉を、彼が少し上げて目を細める。  「『修平さんの家』、じゃないだろ?」  「あっ!…えっと、」  「今日からは『俺たちの家』だよ」  そう言って私の肩を抱き寄せた彼は、私の頬に「ちゅっ」とリップ音を立てた。
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