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4. The first argument
[1]
目を開けると、見慣れたベッドの上にいた。
(夢?…もしかして全部夢だったの?)
ひどく頭が重くて、はっきりと考えられない。
(今、何時だろ……)
目覚めたばかりで視界がぼんやりとしているから、手の甲で目を擦る。
すると少し離れた所から声がした。
「そんなに擦ったら、目が腫れるよ」
声の方を向くと、パソコンデスクの前に座ってこちらを振り向いている修平さんがいた。
「体、辛くない?」
椅子から立ち上がると、私の方に歩いてくる。
ベッドサイドに腰を下ろした彼が、私の額をそっと撫でた。
「まだ、熱あるな……」
私より体温の高い彼の手が、今はひんやりとしていて気持ち良い。
その冷たさにうっとりと目を閉じると、額から頬にかけてなぞるように手を動かしながら、彼は言う。
「覚えてる?杏奈は図書館で倒れたんだ」
「え?」
「記憶にない?」
そう言われて、「あっ」と声が出た。
(あれは夢じゃなかったんだ……)
夢の中の出来事かと思ったけれど、そうではないらしい。
その続きを思い出そうとするけれど、頭が重くて思い出せない。
そんな私の様子を見ていた修平さんは、私の頬に手を置いたまま口を開いた。
「なんとなく嫌な予感がして、出先の帰りに図書館に寄ったんだ。雨宮さんと話している杏奈が見えたから、今日は声を掛けずに帰ろうかと思ったら、杏奈が急にふらついて……俺が一歩遅かったら床に体を打ち付けるところだったんだぞ」
そう告げる声が、珍しく怒っている。
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