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「―――杏奈」
向けた顔の反対側から、修平さんの硬い声がする。
呼ばれているのに、振り向けない。
「杏奈、こっちを見て」
修平さんがそう言っているのに、それでも彼の方を向けない意固地な自分に嫌気がさす。
二人の間に沈黙が降りた。
ベッドに横たわったままの私は、ベッドサイドから下りてくる彼の視線を痛いほど感じるけれど、呼ばれた時に振り向かなかったから、今更どんな顔をすればいいのか分からない。
(修平さんのこと、きっと困らせてる……)
気まずい空気が漂っている。
このままだと、怒った彼が部屋を出ていってしまうような気がして。自分が悪いことは分かっているけれど、それでもどうしても顔が動かない。
口を引き結んで、キュッと両目を閉じたその時。
『キシッ』とベットがたわむ音がした。
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