4. The first argument

6/19
前へ
/231ページ
次へ
 ぞくり、と背中が痺れた。  ゆっくりと彼の顔が近付いてくる。  いつもの彼とは違う、獰猛な瞳が私の視界いっぱいになった時、私はギュッと瞳を閉じた。  「んっ!」  噛み付く勢いで唇が塞がれ、声にならない音が鼻から漏れる。    「んん、~~ぁっ、ふ、」  獰猛な舌が私の口内を蹂躙していく。  あまりの荒々しさに苦しくなって、『イヤイヤ』をするみたいに頭を左右に振ると、彼の大きな手が私の頭の後ろに回って、動きを封じられた。    「~~っ、ふぁっ、~んっ、」  鼻からだけでは足りない酸素を求めて口を開くと、喘ぐような声が漏れる。  食べられるようなキスが苦しくて、生理的な涙が浮かんでくる。  彼の口づけはいつも甘くて優しい。  たとえどんなに深く口づけようとも、こんなふうに一方的に私を追い込むことはない。  今の彼は、「私の全てを喰らい尽くしてしまいたい」と言っているみたいだった。
/231ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4509人が本棚に入れています
本棚に追加