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神様お願い
この世に神様がいるのだとすれば、この私は神様とやらに見捨てられたのだろうと思わざるを得ない。
植物の魔法や土の魔法、宝玉の魔法を持つ人々は、地の神様。
飛行魔法や光の魔法を持つ人々は、太陽や月の神様。
水を操ったり氷を作ったり、そういう魔力を持つ人々は、水神様や龍神様。
炎の魔力や灯火の力を持つ人々には、火の神様。
他にも様々な神様とそれに属する魔力を人間には平等に分け与えられ、人々はそれぞれ自分の神様の御加護を受けている――という古来からの言い伝え。
その信仰が真実ならば、私のようになんの魔力も持たない子供はどうなるのだろう?
神様に見捨てられたと考えたってバチは当たらないでしょ?
そもそも罰を与える神様すらいるのかどうか。
暖かそうな……ううん、絶対暖かいに違いないあのオレンジに光る窓の向こうには、それぞれの神様に祝福された人々が、笑顔で冬支度をしているに違いない。
ちょっと拗ねた心で、窓を見つめて、やっぱり思った通りの幸せそうな女の人の笑顔を見つけ、ため息とともに地下通路へと向かう大扉を閉めた。
冬将軍とやらが国中を舐めまわすように駆け巡ると、この町は雪で覆われ、人々は暖かな地下の街で過ごすようになる。
でも私には地下にも地上にも住む家がなくて、季節ごとに体を滑り込ませる隙間を見つけてはひっそりと幸せそうな人々を見守ることしかできない。
生まれてしばらく……三歳になっても魔力を発動できないと知った親は、私を捨てた。
国の決まりでは魔力のない人間は奴隷にしかできないから、奴隷商人に売るのが習わしだけれど、ここ最近では奴隷商すら見かけないほど、魔力はごく普通に、手足を動かし目でものを見るのと同じくらいに誰もが生まれ持って身につけていた。
捨てられた私は、街角で物乞いをしたり、森の果実を採ったり、川で体を洗ったり、服や下着は店から盗んだり。
可哀想だと思うのか、そんな私を誰もが見て見ぬふりでやり過ごし……
惨めだけど、なんとなく生かされて、それでもこうして六度目の冬を迎えることになった。
ねえ、神様。
いますか?
なぜ私を生かしたのですか?
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