0人が本棚に入れています
本棚に追加
食欲もなく椅子に座ってぼんやりとしていた昼休み、背後で怒鳴り声がした。振り向くと、部長が地面を指差している。見ると、カーペットに飲み物の茶色いシミが付いていた。私のせいにされたが気にならなかった。それを拭き取っていたら、また誰かが後ろを通り過ぎた。足音は聞こえない。だから振り向いたって誰もいない。
書庫にある年末の納会用の包丁で衝動的に首を切っても、きっと拭き取るように言われるんだろうなと思った。エアコンの空調が効きづらいのも、二階のトイレがつまって水漏れするのも全部私のせいにされる。でも、気にしないことにしていた。
もう少しだけ頑張ったらボーナスがもらえる。たった一万ぽっちのお金だけど、大切な生活費だ。だからもう少しだけ頑張ろう。
また男の子を電車で見た。今度は向かいに停まっている快速電車の中だった。男の子は窓際でぴったりと顔をくっつけて首だけしか見えなかった。斜めに傾いた顔は青白く、目は真っ黒で白目が分からなかった。四人掛けの椅子には乗客が座っているのだが、誰も気付いていないらしい。それを電車の吊革に掴まったまま私はぼんやりと眺める。
最初のコメントを投稿しよう!