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「志望動機」
「さっきの子、はつらつとして印象が良かったですね。」
「いや 駄目だ。」
「・・・これで、10人目ですけど・・・」
「何人来ようが駄目なものは駄目だ。私情を挟むなら抜けてもらう。」
俺はこれまでの志望者リストをゴミ箱に投げ入れた。
「なっ・・・彼らだって、この日のために頑張ってきたはずです!」
「だから何だ。」
沸点を超えた彼の叫びは、俺の低音と視線で一気に凍りつく。
「必要ない人間を雇ってどうする。志望動機なんていくらでも綺麗に書ける。」
「それは・・・」
言いたいことは山ほどあったようだが、こう問われると、言葉が喉の奥につっかえ、そこで溶け出してしまう。何が言いたかったかさえも分からなくなってしまうのが人間だ。
まるで、今までの志望者達のように。
「時間だ。」
俺は、何事なく席に座っていた。
彼は、悶々としたまま扉に呼びかける。
「・・・次の方、どうぞ。」
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