プロローグ いらっしゃいませ

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プロローグ いらっしゃいませ

「……」  そこは何の変哲もない路地。しかし、そんな路地に『食事処 夢色』と書かれた看板がポツンと置かれている。 「??」  その看板に書かれている矢印の通りに横を見れば、そこにあるのは同じように『夢色』と書かれた暖簾がかかっていて、パッと見た感じは定食屋の様だが、それ以外に特徴はなく、また周辺にお店などはない。 「いらっしゃいませ。どうぞお好きな席におかけください」  ふと気になり何気なく店内に入れば、自分以外に客はおらず一人の男性店員と一匹の猫がお出迎えをする。 「……?」 「どうかされましたか?」  不思議そうに首をかしげる店員に促される様に席につくが、目の前にメニューらしきモノは見当たらず思わず周りを見渡すけれど、壁には何も書かれていない。 「ああ、メニューは『おすすめ』だけなんです」  そう言って苦笑する店員に、こちらは「ああ、そうなんですね」としか返事のしようがない。  とりあえずここが「食事処」な上に「そもそも自分がなぜこんなところにいるのか」などなど疑問はつきないので「あの」と話そうとすると……。 「少々お待ちください」  こちらが何かを言う前に店員は折り目正しくお辞儀をして去ってしまう。 「え、あの」  色々と聞きたかったこちら側をしては思わず面食らってしまい、その場を去ってしまう店員の後ろ姿を見送る事しか出来ない。 「どうしよう」  この時になって「お金を持っていない」という事に気がつき、不安に思いつつ料理を待っていると。 「なんだ、そんな不安そうな顔をして」 「!」  突然聞こえてきた店員とも違う声に驚いて周りを見渡すと……。 「なんだ、ワシが喋っていたらおかしいのか」  そんな年寄りの様な口調で店にいた猫がこちらの方を見て話しかけてくる。 「お待たせ致しました」  状況が分からないままオロオロしている内に先程の店員が料理を運んで来て、その料理を見た瞬間、大抵その人は驚く。  でも、その理由はその人にしか分からない。なぜなら、その料理はその人が生前の思い出の料理だったから――。
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