梅雨 悲しみの鮭茶漬け

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◆   ◆   ◆   ◆   ◆ 「どうした、何が不安なんだ」 「!」  ニャン蔵が声をかけると、少女は驚きのあまり目を見開いている。 「ねっ、猫さんがしゃべっている!」 「なんだ、元気そうじゃないか」 「え」 「お前さんがあまりにも泣いているから、どうしたものかと思っていたんだ」  ニャン蔵としては苦笑いを見せたつもりだったが、どうやら人間からは猫の微妙な表情の変化は分かりにくいらしい。 「で、お前さんは何をそんなに悲しんでいたんだ?」  そう聞きつつヒョイッとニャン蔵は少女の隣のイスに座った。 「あ、えと」 「ここにはワシとあの店主しかおらんが……無理強いはしとらん。言いたいのなら言えば良いし、言いたくないのであれば言わなくても良い」  軽くあくびをしながら言うと、少女は拭き終わったタオルをギュッと握りしめ、絞り出すように「あのね」と話し始めた――。 ◆   ◆   ◆   ◆   ◆  少女の話から分かったのは、少女はついさっき学校に向かって集団登校をしている最中だったという事だ。 「私は一番後ろで下の学年の子たちが先に行きたい気持ちを抑えつつ待っていてくれるのが分かっていたから、青になったのを確認してすぐに横断歩道を渡ったら……」  そこに信号無視をしたと思われるトラックが突っ込んで来たのだと言う。
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