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「……」
しかし、私が手も付けずに固まっているのを見た猫は不思議そうに「どうした?」と声をかける。
「いっ、いえ。あの」
「はい」
「どうしてこの『野菜炒め』を」
「あなたの思い出の味ではないかと思いまして」
ニコリと笑顔で答える男性に、私はそれ以上何も言えなかった。
でも、私としてはこの『野菜炒め』が出て来たのは衝撃的だった。なぜなら、この『野菜炒め』は父方の祖母が私と初対面した時に作ってくれたモノだったからだ。
キャベツに人参。タマネギともやしが入っていて、そこにベーコンと炒り卵が入っている……コレが祖母の『野菜炒め』だった。
しかし、一般的な『野菜炒め』とは少し違ったらしく、外食で『野菜炒め』を頼んでも同じモノが出て来た事はない。
「……」
それを祖母に言うと、お弁当にも入れてくれる時があり、私にとってコレは『思い出の味』で『祖母の味』だった。
「えと、それじゃあ……いただきます」
「どうぞ、冷めないうちに」
男性の言葉に頷きながら、早速『野菜炒め』に箸を伸ばした――。
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