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その姿ときたら、腰まである長い髪を束ねることもなく大きくなびかせ、上は長袖のシャツで下は足首まであるロングスカート。
そしてサンダルを履いているのだ。
とてもマラソンに参加する服装ではない。
おまけにこの女、前を見ずに俺のほうに顔を向け、始終にたにた笑いながら走っている。
まれに沿道から飛び入りしてくる奴がいるが、関係者が誰もこの女を止めないし、ずっと俺のスピードに合わせて真横を走っているのだ。
あの服装で、にたにたと笑いながら。
――なんだこいつは。
はっきり言って滅茶苦茶気持ち悪い。
俺はペースを上げた。
ゴールまでまだ距離があるのにペースを上げるのははっきり言って危険だが、その時の俺はそんな基本的なことさえ頭になかった。
それでも女はついてくる。
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