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どんなに惜しんでも、どんなに拒否しても、その日は近づいた。
二か月しかない、そう思っていたが本当に二か月あったのかどうかさえ疑わしかった。
最後のクリスマスの夜をノっ君と過ごした恵子は、翌日の最後の日を迎えるつもりはなかった。
ノっ君との決定的な別れを体験してしまうのは恐ろしかったし、ログインしようとしてノっ君に会えないのを実感してしまうのも嫌だった。
だから奇跡の起こらなかった25日の夜、ノっ君と親しかった他のLiveyやその飼い主に挨拶して回り、元気に跳ね回る家族の姿を目に焼き付けた。
ログアウトしてしまったらもう一生彼と会う事が出来ない、もうこの姿を目にする事は出来ない、そう思うといつまでたってもログアウトする事が出来なかった。
いつになく夜更かしを決め込んでいる飼い主にオカメインコの様なLiveyは小首をかしげ、心配する様に見上げていた、
彼はまた明日も自分に会えると思っているのだろうか、明日もお役に立とうなんて考えているのだろうか、だとするならこの従順なAIを削除してしまう人間とはどれだけ上等だと言うのだろう。
涙があふれて止まらない。どうにかしたい、なのに自分には何一つできはしない、気付けば謝罪と彼に対する愛情の言葉が溢れていた。
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