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Ⅵ
「──2人目のサンタさん。一ノ瀬さんは、誰だと思いますか?」
紗奈は机に身を乗り出して、先輩に意見を求める。
「状況証拠的には陽介さんっぽいな」
律希の真面目な口調に、紗奈はくすっと笑う。
「状況証拠って……。一ノ瀬さん、探偵みたい」
すると律希は、
「どちらかと言えば刑事……というか、二瀬の口調真似したんだけど」
律希は、警視庁連携課の友人の名を挙げた。
「二瀬さんの真似ですか? 全然気付きませんでした」
「……下手で悪かった」
「えっ、そんなつもりで言ったんじゃ無いですよ」
紗奈は慌ててそう言うが、すぐに2人して笑い出した。
「僕たち、さっきからお互い馬鹿にするか、からかうかしかしてなく無い?」
「だから、私はしてませんって。一ノ瀬さんが勝手にそうしてるんでしょ」
紗奈が言うと、律希は「そうかな?」と言って笑った。そして、
「このクリスマス、もう一つ謎が有るよね」
と呟く。
「もう一つですか?」
「なぜ、プレゼントを開けた直後に、『紗奈ちゃんは水色の小鳥をノノと名付けたのか』。川野は分かる?」
さすがに、この謎には紗奈も首を傾げた。
「なんか……ノノだ! ってひらめいたんでしょうね」
そんな彼女の回答に、律希は笑いを堪える。
「……昔から直感が鋭い子だったんだね」
「私は常に、理論じゃなくて感性です」
紗奈はなぜか、胸を張って答える。
「うん、知ってる」
律希はそう言うと、窓の外を見る。しばらくそうして考え込んでから、彼は「さて」と紗奈の方を向き直った。
「さすがにノノの謎は無理だけど……マフラーの入手経路と、サンタさんのふりをした犯人は分かったよ」
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