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Ⅷ
「──この男の子が、2人目のサンタさんの正体。つまり……僕だ」
紗奈がその言葉を理解するのには、長い時間がかかった。
「僕って……一ノ瀬さん⁉︎」
想像を遥かにこえる回答に、紗奈は思わずガタッと椅子をずらしてしまう。
「それ、どういうことですか……?」
紗奈が聞くと、律希は首を傾げた。
「あれ、川野知らなかったの? 僕の父も瑞穂さんの会社で働いてたって」
「それは知ってます。一ノ瀬弓月さんですよね?」
「そう。だから、手袋をくれた『会社の人』は弓月だよ」
そこまでは理解出来たが、さすがに目の前の先輩が18年前のサンタさんだというのとは繋がらない。
「一ノ瀬さん、その時何歳ですか?」
「小3? 確かそのくらい」
「その頃、私たち会ったことありましたっけ」
「無いよ。直接会ったのは、川野がFTTに入社して来た時だから。それまでは、SIX STORYのお嬢様と一介の社員の息子に接点は無かった」
律希が言うと、紗奈は少し嫌そうな顔をする。
「私はお嬢様じゃなくて、社長の妹の娘です」
「細かいな。別にいいじゃん」
「お嬢様、嫌いなんですってば」
紗奈が本気で主張するので、律希は肩をすくめた。
「分かったよ。でも、実際僕と川野に接点がなかったのは確かだよね」
「はい。だから、何でプレゼントなんて……」
「それは単に、『サンタさんになりたかった』かなぁ……」
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