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 律希は苦笑いして言った。 「ごめん、くれると思わなくて、用意してないんだ」  律希の言葉を理解して、紗奈は「なんだ」とほっとする。 「そんなことですか? びっくりさせないで下さいよ」 「ごめんね。プレゼント、ありがとう」  紗奈がくれたのは嬉しいのに、素直に喜べないのが辛い。そう思った律希に紗奈は、 「一ノ瀬さんが優しいのはいいんですけど、素直に喜んでくれた方が嬉しいです」  と言った。  律希は、少し考え込んで不意に手を挙げて店員を呼び止めた。 「お呼びでしょうか?」 「はい。この、クリスマスショートケーキ2つ。食後に持って来てもらえますか?」 「了解致しました!」  店員が去ると、律希は肩をすくめて言った。 「これが、僕からのクリスマスプレゼントです」  律希らしいやり方に、紗奈はふふっと笑って、 「ありがとうございます」  と言う。 「……残業になっちゃった時は、散々なクリスマスだなぁって思いましたけど、今はすごく幸せです」  紗奈が呟くと、律希もうなずく。 「そうだね。結構いいクリスマスイブになった」  クリスマスツリーのライトが、優しく点滅するのを見ながら、律希は言った。その時、店員が駆け足でやって来た。 「お待たせ致しましたー! ふわとろオムライスです」 「わーい! ありがとうございます」  紗奈が声を上げ、店員がにっこり微笑む。  最城のクリスマスイブは、ゆっくりと過ぎて行った。
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