18人が本棚に入れています
本棚に追加
律希は苦笑いして言った。
「ごめん、くれると思わなくて、用意してないんだ」
律希の言葉を理解して、紗奈は「なんだ」とほっとする。
「そんなことですか? びっくりさせないで下さいよ」
「ごめんね。プレゼント、ありがとう」
紗奈がくれたのは嬉しいのに、素直に喜べないのが辛い。そう思った律希に紗奈は、
「一ノ瀬さんが優しいのはいいんですけど、素直に喜んでくれた方が嬉しいです」
と言った。
律希は、少し考え込んで不意に手を挙げて店員を呼び止めた。
「お呼びでしょうか?」
「はい。この、クリスマスショートケーキ2つ。食後に持って来てもらえますか?」
「了解致しました!」
店員が去ると、律希は肩をすくめて言った。
「これが、僕からのクリスマスプレゼントです」
律希らしいやり方に、紗奈はふふっと笑って、
「ありがとうございます」
と言う。
「……残業になっちゃった時は、散々なクリスマスだなぁって思いましたけど、今はすごく幸せです」
紗奈が呟くと、律希もうなずく。
「そうだね。結構いいクリスマスイブになった」
クリスマスツリーのライトが、優しく点滅するのを見ながら、律希は言った。その時、店員が駆け足でやって来た。
「お待たせ致しましたー! ふわとろオムライスです」
「わーい! ありがとうございます」
紗奈が声を上げ、店員がにっこり微笑む。
最城のクリスマスイブは、ゆっくりと過ぎて行った。
最初のコメントを投稿しよう!