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「いいえ、むしろ嬉しいです!」
紗奈が間髪入れずに答えると、律希はほっとしたように笑った。
「なら、良かった」
最城駅前の飲食店は大通りのこちら側に沢山ある。そのうちのどれかを選ぶのが難しいくらいの店数だが、紗奈と律希はさして迷うことなく近くの店に入った。
店の中はぼんやりと明るく、温度もちょうど良く暖かい。
「あっ、クリスマスツリーだ」
店を入ってすぐ、綺麗に飾り付けられたツリーが目に入る。サンタ帽子を被った店員が、紗奈たちを見て微笑んだ。
「綺麗でしょう? これ、本物のモミなんです」
「そうなんですか? 素敵ですね……!」
紗奈が答えると、店員は嬉しそうに、うなずいた。
「じゃあ、ご案内しますね。こちらの席にどうぞ」
案内されたのは窓際の席で、ちょうどそこから外のイルミネーションが見えた。
「いいお店ですよね。何回来てもいいなぁって思います」
席に着いた紗奈は、マフラーを外しながら言う。
「深夜までやってるの助かるよね」
「ですよねー。むしろ私たちのための店だって思っちゃうくらいです」
残業や不規則な勤務時間の多い紗奈たち時間警察にとって、仕事終わりの時間を待っていてくれるこのカフェは癒しの場所だった。
いつもは静かな店内に、今日はクリスマスソングのBGMや、周囲の話し声が響いている。この特別感を感じさせる演出も、紗奈は気に入った。
「さて、一ノ瀬さんは何頼みますか?」
少しテーブルに身を乗り出して、メニューを渡す。すると律希は、
「あんまり食欲無いんだよね。……紗奈のおすすめで」
と返してきた。紗奈はふふっと笑う。
「また、そんなこと言うんですか? 届いたらどうせ食べるのに」
「それはそうだけど、今は選べる気分じゃないから」
「分かりました。代わりに選びますね」
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