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「陽介も紗奈もおやすみ。良い夢見てねー!」  母の瑞穂がそう言って、部屋の電気を消し、寝室を出て行った。暗くなった部屋で、紗奈は自分の布団に(くる)まる。 「お兄ちゃん、おやすみ」  二段ベッドの下から、紗奈は上に寝ている陽介に声をかける。すると陽介は、「ちょっと待って」と言った。 「……なに?」  紗奈はもう眠いのだ。それなのに、陽介は潜めた声で、とても不思議なことを言いだした。 「俺らでさ、サンタさんになってみない?」 「……サンタさん?」  わくわくする響きに、眠気が吹き飛ぶ。紗奈はパッと布団から起き上がった。 「サンタさんになるって何? 私がサンタさんになるの⁉︎」  紗奈が興奮して聞くと、陽介は慌てたように指を口に当てて「静かに」と言う。 「お母さんに聞かれたら、『まだ寝てないの?』って怒られるだろ。それに、これは秘密の作戦なんだから、大きい声出したら駄目だよ」 「秘密の作戦……」  またもや、魅力的なワードが出て来る。紗奈はパッと口を手でふさいで、 「にゃあむむみもね」 「……何言ってんのか分かんないよ。口は開けてていいから、静かな声で話して」 「……続きを……話してください」  と兄にせがんだ。すると、陽介は、二段目から降りて来ると、紗奈の布団に一緒に入った。2人は寝っ転がって顔を合わせ、秘密の作戦会議を始める。 「俺たちがサンタさんになるって言うのは、『こっそりお母さんにプレゼントをあげよう』っていうことだよ」  陽介は作戦の概要を、そう説明した。 「こっそりプレゼントを用意して、お母さんの枕元に置いとくんだ。どうかな? サンタさんみたいだろ?」  紗奈は真剣な表情で答えた。 「うん。サンタさん、みたい」 「これこそが! 名付けて、『サンタクロース作戦』……!」 「楽しそう! やるやる!」  紗奈が間髪入れずに賛成すると、陽介は満足げに頷いた。
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