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Ⅱ
「陽介も紗奈もおやすみ。良い夢見てねー!」
母の瑞穂がそう言って、部屋の電気を消し、寝室を出て行った。暗くなった部屋で、紗奈は自分の布団に包まる。
「お兄ちゃん、おやすみ」
二段ベッドの下から、紗奈は上に寝ている陽介に声をかける。すると陽介は、「ちょっと待って」と言った。
「……なに?」
紗奈はもう眠いのだ。それなのに、陽介は潜めた声で、とても不思議なことを言いだした。
「俺らでさ、サンタさんになってみない?」
「……サンタさん?」
わくわくする響きに、眠気が吹き飛ぶ。紗奈はパッと布団から起き上がった。
「サンタさんになるって何? 私がサンタさんになるの⁉︎」
紗奈が興奮して聞くと、陽介は慌てたように指を口に当てて「静かに」と言う。
「お母さんに聞かれたら、『まだ寝てないの?』って怒られるだろ。それに、これは秘密の作戦なんだから、大きい声出したら駄目だよ」
「秘密の作戦……」
またもや、魅力的なワードが出て来る。紗奈はパッと口を手でふさいで、
「にゃあむむみもね」
「……何言ってんのか分かんないよ。口は開けてていいから、静かな声で話して」
「……続きを……話してください」
と兄にせがんだ。すると、陽介は、二段目から降りて来ると、紗奈の布団に一緒に入った。2人は寝っ転がって顔を合わせ、秘密の作戦会議を始める。
「俺たちがサンタさんになるって言うのは、『こっそりお母さんにプレゼントをあげよう』っていうことだよ」
陽介は作戦の概要を、そう説明した。
「こっそりプレゼントを用意して、お母さんの枕元に置いとくんだ。どうかな? サンタさんみたいだろ?」
紗奈は真剣な表情で答えた。
「うん。サンタさん、みたい」
「これこそが! 名付けて、『サンタクロース作戦』……!」
「楽しそう! やるやる!」
紗奈が間髪入れずに賛成すると、陽介は満足げに頷いた。
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