たまにはクリスマスも悪くない

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 クリスマスの数日前、夜遅いというのに何人か残業をしているオフィスにて。 「先輩、クリスマス何か予定ありますか?」  小休憩をいれていた山下のもとに、後輩の女子社員である最上が話しかけてきた。 「年賀状の作成と大掃除をする予定がある」  山下は「よく見ればイケメン」と言われる顔をしかめてぶっきらぼうに答える。 「え、クリスマスなのに正月の準備なんですか?」  目を見開く最上に山下は舌打ちしたくなった。  今年のクリスマスは日曜日で、仕事で埋めることができなかったのだ。 「当たり前だ。俺はキリスト教徒じゃないから、キリストの誕生日なんて祝う必要はないんだよ!」 「……日本人はそんなの関係なく楽しんでいると思いますよ」  そこそこかわいらしい顔をキョトンとさせて最上は首を傾げる。 「んなことはわかっている! けどな、俺はクリスマスにかこつけてばか騒ぎするのが嫌いなんだ!」  クリスマスセールで店は混むし、スーパーで鶏肉はどんどんなくなるし、何よりイルミネーションに群がるカップルが鬱陶しいのだ! 「……もしかして先輩、バレンタイン無くなれ! とか言うタイプですか?」 「いや、あれはチョコがうまいからいい」  最近のバレンタインでは女子社員が気軽に義理チョコを配ってくれるため「誰からもチョコを貰えない」という状態は回避できている。まぁ、中には「ホワイトデーに3倍返ししてね!」というヤクザなみに厄介な奴もいるが。 「クリスマスケーキもおいしいですよ?」  それを言われて山下は最上を睨み付ける。 「あほ! あんなの男1人で買えるか!」  そもそも山下は現在一人暮らしで、一緒にケーキを食べる相手はいない。やったとしてもなんとなく惨めなだけだ。  だから、山下はクリスマスを祝うことを止めたのだ。 「とにかく、俺はクリスマスとは無関係なんだ!」
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