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寒い春に雨と
左手に傘を持ち変えて、右手をポケットに入れグー、パーを繰り返す。
かじかんだ右手に血が通い始めた、吐く息がいちいち目の前の景色に現れるほど。
手袋を学校に忘れたのは大失態。
またスマホで地図のアプリをクリックするとアイコンがマップ上の現在地を示す。
前方の突き当たりで住宅街は途切れ、欄干と桜の木がみえている。大丈夫、道は合っている。
スマホをしまい、道を進むと川沿いの桜並木に出た。左折して200メートル直進すれば目的地。
桜並木の桜はほとんど散って、申し訳程度、道路に雨で張り付いている花びらがその名残。
知らないうちに歩く速度が上がる。
桜の枝越しに、目的の建物らしきビルが左手にみえ、その1階部分を横目で眺める。
外見はネットにアップされていた画像と同じ。壁がレンガ、青色のアーケードが張られていてその下のテラスに3組のテーブル席が設置されているため、ガラス張りの割には店内の様子はほとんど見えない。
うんオシャレ。場違い感からと初入店のせいか緊張で鼓動が強く打ち始める。
一度、店を通り過ぎ、心の準備、深呼吸を気がすむまでやっていると、今度は左手が冷気に犯されてきた••••••、もう我慢できそうにない、仕方がない突入だ。
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