ーーーーーーーーーー松田side2

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ーーーーーーーーーー松田side2

   俺も大分仕事を覚えてきたので彼女と仕事を共にする機会が少なくなってきた。自分の成長は嬉しいがずっと新人のままでもよかったなぁとか思ってしまう。  データの入力を済ませ時刻を確認すると十八時。 定時時刻は過ぎているが大分早めに仕事を切り上げられそうだ。  チラッと彼女の方を見ると眉間に皺を寄せながらパソコンと格闘している。  静かに席を立ち休憩室でミルクティーとブラックコーヒーを買い、自分のデスクに戻るとまだ彼女はパソコンと格闘していたので、ソッとミルクティーを彼女のデスクの上に置いた。 「え、松田くん買ってきてくれたの? ありがとう」  たまに素直な彼女が凄く可愛い。 「いいえ、そろそろ終わりそうですか?」 「ええ、あと二十分くらいかな」 「じゃあ外のコンビニで待ってますね」 「……はい」  周りに聞こえないよう小声で約束をし、先に鞄を持ち会社を出た。  会社近くのコンビニに入り雑誌を立ち読みしながら彼女を待つ。そんな時間も全く苦じゃない。 「松田くん! お待たせ!」 「水野さんお疲れ様です」 「ちょっとついでに飲み物とか買ってきても良い?」 「もちろんいいですよ」  コンビニのカゴを持ち彼女がスタスタと歩いて向かった先はお酒コーナー。缶チューハイを四本入れレジでお会計をし、コンビニを出た。 「今日の晩酌用ですか? 持ちますよ」  彼女の手からレジ袋を取り右手で鞄と一緒に持つ。左手は彼女と後で手を繋ぐ為に開けておきたいと言う下心。 「そう……あのさ……」 「なんですか?」 「うちでご飯食べていかない? 簡単な物しか作る時間無いけど」  今すぐに抱きしめたい衝動に駆られる。  耳まで真っ赤にして、彼女が勇気を出して俺を誘ってくれたことに嬉しさが隠せない。 「行きます! めっちゃ嬉しいです!」  その為にこのチューハイも買ってくれたのかと思うと嬉しくて堪らない。  電車で三駅、徒歩五分のところにある彼女のアパートにすぐ着いてしまった。  もちろん手を繋ぐ為に開けていた左手は電車を降りてからの五分しっかりと彼女の右手を握りしめて来た。 「じゃあちょっと待っててね」 「俺手伝いましょうか?」 「いいのいいの、本当に簡単な物しか作らないから」 「分かりました、じゃあ真紀が料理してる所を見てくつろいでますね」 「なっ! 普通にしてて下さい!」  まだ慣れていないのだろう、真紀って名前で呼ぶ度にビクッと身体を反応させて驚いている。  いつか自分も彼女に大雅って呼ばれたら……嬉しくて昇天するかもしれないな……  換気扇のゴォーと言う音に混じれてトントンと野菜を切る音、ジューッと肉の焼ける音といい匂いが漂ってくる。  彼女の方に視線向けるとその視線に気づいたのかムッとした顔でこちらをキッと睨んでくる。  普段スーツの彼女がラフな部屋着に着替えてエプロンをしている姿が無性にそそる。  今すぐここで彼女を抱きたい、一枚一枚丁寧に脱がして露わになった肌の熱を感じたい……と思ってしまう自分。  でもきっと彼女はそんな事は考えずにただ一緒にご飯を食べるだけだと思っているに違いない。  煩悩退散、煩悩退散…… 「お待たせ」 「うわ、すごい美味しそうです」 「普通だよ、普通」 「じゃあ早速頂きます」 「ど、どうぞ」  ジッと俺の表情を伺っている。なんて可愛いんだろう。もう可愛いがさっきから止まらない。 「凄く美味しいです」 「そ、そう、よかったわ、お酒もどうぞ」  安心したのか彼女も箸を持ち食べ始めた。 冗談抜きで本当に彼女の作った料理はどれも美味しかった。白いご飯に、小松菜と油揚げの味噌汁、豚ロースのネギ塩がけ、揚げ出し豆腐。  どれもお酒にも合うし、もう今すぐにでも嫁にきてくれ! って言いたくなった。 「食器は俺が洗いますよ」 「え!? いいわよ、座ってて」 「ご馳走になったんで俺が洗います、今の時代は家事分担でしょ?」 「なっ……じゃあお願いします」 「ははは、じゃあ座ってて下さい」  さりげなく俺は結婚しても家事分担してやりますアピール。あの驚いた反応からして気づいたに違いない。  皿を洗い終わりソファーに座っている彼女の隣に腰を下ろすとスヤスヤと寝息を立てて眠っていた。  「安心し切ってるな……」  嬉しい事でもあり、悲しい事でもある。  密室で付き合ってる大人の男女二人きりなんてもうやる事は決まってる、でもそれは彼女の頭にはないようだ。俺の家でご飯をご馳走した時は流石に付き合っていなかったから身体まで求めたら彼女からのレッテルが最低な男になってしまいそうなきがして、グッと我慢していた。 (とは言えキスは出会った直後にしちゃったんだけどな……)  フニフニと彼女の唇を触ると「ん……」と反応する。 (あ~これ以上はもうやばい、勃ちそうだわ) 「真紀、起きて」  トントンと、肩を叩き彼女を優しく起こす。 「んん……、あ、ごめん、寝ちゃってた」 「大丈夫だよ、俺そろそろ帰りますね」 「え、あぁ、そうだよね! 外まで見送る」  コートを羽織り二人でアパートを出た。 「お皿洗ってくれてありがとう」 「こちらこそ凄く美味しかった、また作ってくれますか?」 「も、もちろん!」 「あ、明日の休みって何してますか?」 「明日? 特に予定はないけど」 「じゃあ明日一日一緒に居たいんですけど、いい?」 「暇だからいいわよ」 「じゃあ十時ごろ迎えにきますね、泊まれる準備もしておいて」 「わかっ、……泊まれる準備!?」 「じゃあまた明日」 「え、ちょっとっ!!」  驚き焦っている彼女の唇に軽くキスをし、有無を言わせないよう直ぐに帰った。あれで少しは俺のことを男だと意識してくれたかな……期待で胸が溢れる。
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