まったりデートでお泊まりですー1

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まったりデートでお泊まりですー1

   泊まり? トマリ? TOMARI? (……ついに来てしまったわね、この時が)  泊まれる用意という事はきっと……いや、絶対にそうだろう。もう大人のお付き合いなんだから当たり前の事だ。  だが一つ私には問題がある。  もう十年以上恋人同士が行う行為をしていない。昔にしたと言っても二十歳の時、大学の先輩と流れで一回やってしまっただけで、たった一回の経験しかない。いわゆるセカンドバージンってやつだ。 「ややややややばいよー!!!」  急いでスマホを取り出し『セカンドバージン』を検索する。  性交の経験はあるが長い事性体験から遠ざかっている事。期間として定めはないが一、二年間が空いたらセカンドバージンと考えている人が多い。 「一、二年!?」  思わず大きい声が出てしまった。一、二年って……  十年レベルの私はもはやセカンドバージンでもなく処女なのでは!? (どうしよう……また痛いのかな……)  初めての時はその当時好きだった先輩に誘われるがままにホテルに入ってしまった。  痛かった、それしか記憶にない。  段々痛くなくなるよ、と言われながら早く終わらないかな、まだかな、と耐え続けた。  今思えば相手の男はワンナイトラブ的な事がしたかっただけなのだろう。それ以来一切連絡が来る事は無かった。  とにかく出来ることはやっておこうと、急いでお風呂にお湯を溜め半身浴をし、汗をたっぷりかいて、ムダ毛が生えていないか全身隈なくチェックした。  顔パックをしながら大きめの鞄に、お泊まりのために化粧水に歯ブラシや部屋着、そして下着……   (あっ! そういえば昔涼子に貰った新しい下着があったはず!) 「確かこの辺にしまっておいたと思うんだけどなぁ」  クローゼットの奥方にしまってあった異様にラグジュアリーな箱を見つけ、取り出して蓋を開ける。 「ひぃっ……」  これぞまさに情熱の赤! とも言えるくらい真っ赤な下着の上下セット。派手すぎない上品なレース遣いで正直言って可愛い。でも問題はTバックなのだ。なので普段使い出来ないため箱に入れたまましまっておいたんだと思い出した。 (これ付けてたら凄いヤル気満々って思われちゃうかも……)  そっと箱に戻してクローゼットの手前に置き直した。下着はいつもつけている普通の白のレースを鞄の中にしまった。  時計を見るともう夜中の一時。かなり準備に時間をかけ過ぎてしまった。布団に入りふと考える。  いつかあの下着を付けられるくらい自信がつく時がくるのかな……  ピピピ、ピピピ、スマホのアラームが鳴る。  ハッと飛び起き、アラームを止めた。  ついにこの日が来てしまったか……グッと気合いを入れる。  顔を洗い、食パンを焼いてバターを塗り、ミルクティーを電子レンジでチンして温め簡単に朝ご飯を済ませる。  皿を洗い終え、寝室に戻りクローゼットを開き今日着ていく服を選ぶ。ノルディック柄のセーターに黒いプリーツスカートを合わせた。  スカートなんて殆ど持って無かったくせに松田くんとのお詫びデートの後、休日に一人で服を買いに行ったのだ。その時に買った服が遂に生かされる時が来ようとは……  洗面所で化粧と髪の毛を整える。化粧はいつも通りだが、髪の毛は軽く巻いて緩いポニーテールにした。  あっという間に約束の時間まで後三十分。  ソワソワする。初めてのデート、いや、お詫びデートした時もこうやってソワソワしながら松田くんを待ったな……と思い出す。 "着きました"  あの時と同じ文面。つい笑みがこぼれた。  黒いショートブーツを履き玄関を出ると松田の白い乗用車が止まってるのが目に入る。 「真紀っ! おはようございます」  笑顔で車から出てくる松田くんに自然と自分もつられて笑顔になる。  松田くんの私服を見るのは二回目だが今日もお洒落だった。タートルネックの黒いセーターに黒のパンツで脚のラインが綺麗に出ている。ベージュのチェック柄ロングコートも高い身長によく似合っていてつい見惚れてしまう。  今日はコンタクトなのか眼鏡をしていない。 「……おはよう!」 「今日は美味しいもの食べなら俺の家でゆっくり過ごしませんか?」 「いいわね! 松田くんの作ったご飯美味しくて大好きよ」 「ちょっ……朝から幸せすぎます」 「なんでよ!?」 「だって真紀が大好きって言うから……」 「なっ! ご飯がって言ったでしょう!」 「ははは、俺の今日は腕振るっちゃいますよ」 「楽しみだわ」  嬉し、楽しみ、ドキドキのデートに胸が高鳴った。 (きょ、今日しちゃうのかしら……お、大人だもんねっ……)
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