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   インターホンの画面に大きく誠が写り「開けて~」と言っているのが聞こえる。  ――嫌な予感が当たった。 「開けてあげなよ」  本当は嫌だけど…… 「すいません……」  松田くんが玄関に向かいドアを開けるとドタドタと勢い良く誠が入ってくる。 「あー!! 二人でご飯なんて食べちゃって! ずるい! 私も食べたいっ!」 「おい、ったく何勝手に入ってんだよ」 「いつも勝手に入ってるでしょ~、ねぇ私にもご飯ちょーだいっ」 「駄目だ、今日は彼女が来てるから帰ってくれ」  誠は私の頭のてっぺんから爪先までジロリと見ると「初めまして誠です、大雅がお世話になってるみたいで」と明らかにワントーン低い声でぶっきらぼうに自己紹介をした。  私も慌てて「水野真紀です」と名前だけ名乗ったがスルーされ、松田くんにべったりと寄り添い「私も一緒にご飯食べたい~」と猫のように甘えている。  すいません、と私にアイコンタクトで訴えてくる松田くんに「一緒に食べましょう」と誠を受け入れた。  ローテーブルに誠の分のご飯を運び三人でもう一度食べ直す。なんだか気まずいと感じているのは私だけだろうか…… 「誠、今日はそれ食べたら帰れよ?」 「えー! 私今日泊まる気満々で来たんですけど?」 「今日は駄目、真紀が泊まるから」  なんとなく、なんかすいませんと言う気持ちになる。 「三人で寝れば良いじゃん! ね? 真紀さんもいいですよね?」  急に会話を振られ、いつの間にか私の事を真紀さんと呼んでいる誠に呆気を取られる。 「あー……そしたら私帰るよ?」 「は!? それは駄目ですよ! 誠が帰れ!」 「……酷いじゃん、今日は一緒にいて欲しかったのに……」  ……!? いやもう彼女ですか? とツッコミたくなるような言い草に驚きと動揺を隠せない。  男と分かっていながらも見た目は完全に可愛らしい女性なのでなんだか浮気現場を目撃しているような感じだ。 「……じゃあ今日は三人で」  ガッと目を見開き冗談じゃない! と言いたげな驚いた顔で松田くんは私を見る。  それに気づいていないのか「やった~! 真紀さんありがとう~」と大喜びで誠はご飯を食べ始めた。  食べ終わったお皿は誠がお邪魔しちゃったお礼と言いながら洗ってくれている。 「ちょっと真紀来て」と松田くんに小声で呼ばれたので後をついていき寝室に入るとグイッと抱き寄せられた。 「も~、今日の夜は朝までイチャイチャする予定だったのに……」 「仕方ないよ、誠さんは大事な家族みたいな人でしょう?」 「そうだけど……じゃあちょっと充電させて?」  ギュウッと抱きしめ合い静かにキスをした。  ゆっくりと唇が離れてなんだか寂しい。 「……真紀の今の顔めっちゃエロい……」 「っえ!? 何言ってんのよ!」 「あー足りない」  ――私もだ。 「もう! 戻るよ!」  残念そうに肩を落としながらリビングに戻ると既に皿を洗い終えた誠がソファーにしかめっ面で座っていた。 「大雅、一緒にお風呂入っちゃおうよ」  松田くんの有無を聞かずに腕を引っ張りお風呂場に連れ去られて行った。一人リビングに取り残され、フゥと一息ついてソファーに倒れ込んだ。 (多分誠さんは私に松田くんを取られたくなくて必死なのかもな……)  女の勘って言うやつは大体当たる。  でも私だって松田くんの事が好きだ。けれど誠は松田にとって家族同然、なんとか上手く付き合っていきたいと思ってはいるけど……。 (二人でお風呂って……なんか変な想像しちゃうよ……)
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