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 クスクスと笑う誠から悪意を感じる。 「いつもそうだもん、ヤッて飽きたら別れて、真紀さんもせいぜい飽きられないように派手な下着でも選んだほうがいいんじゃない?」 「あ……そうだね、うん、そうしようかな!」  グサッと心臓をなにか鋭利な物でひとつきされたような衝撃が身体を走る。目の前がフッと急に暗くなりスーッと身体から力が抜けていった。  立っているので精一杯だが、必死で力を振り絞り全く気にしてない! 大丈夫! と自分に言い聞かせた。  これがいいんじゃない? とシンプルな濃いブルーの下着を誠に勧められたがなんとなく誠の選んだ下着は嫌で、いつも選ばないような黒色でパンツは横部分が紐パンになっている少し派手目の下着を買った。  これが私のせめてもの誠への反抗だったのかもしれない。  買い物を済ませ、カフェで待っている松田くんの元に戻ると見知らぬ女性の二人組に話しかけられていた。  なんとなく聞こえてくる話し声は「一緒に遊びませんか」と言ってるような気がした。  つまり松田くんは逆ナンされている。 「ちょっとぉ、この女誰よ?」  すかさず誠がいつもよりもさらにワントーン高い声で松田くんと女性の間にグイッと割り込み、ジロリと品定めするかのように女性たちをみて、キッと睨むと女性達はヤバっと言いながら足早に帰って行った。 (凄いな……私なんかより凄い彼女っぽい……)  いやいや、負けちゃダメだ! 「松田くんお待たせっ」 「真紀! 何か気に入った物買えました?」 「すっごーくセクシーなランジェリーかったよねぇ~」 「ちょっと! 言っちゃダメよ!」  「いいじゃーん」と誠は全く悪気のなさそうなので怒る気にはならない。それでも私はさっきの言葉が頭から離れず作り笑いをする事しか出来なかった。   「じゃあ次泊まる時につけて来てくださいね」  誠に聞こえないように私の耳元でボソッと呟く。 吐息が耳に触れゾクリと背筋が震える。  次があると分かると嬉しくて涙が浮き出そうになるのをグッと我慢した。  自分で思っている以上にさっきの誠の言葉が私自身にダメージを与えているのかもしれない。  一階にあるフードコートで三人とも昼食を済ませ買い物も済んだので帰宅する事にした。  誠の家は松田くんのアパートから車で十分ほど進んだ所にあるアパートらしく、先に誠をアパートまで送る事にした。  まだ帰りたくないと子供のように駄々をこねていたが、松田くんはまったく聞く耳持たず誠をアパートの前に下ろしてすぐに車を発進させた。  後ろを振り向くと物凄く怖い顔で車を見送る誠の姿が見えた。相当怒っていたのだろう。 「誠さんすごい怒ってたけど良かったの?」 「いーんですよ、俺が真紀とイチャイチャできる時間がどんどんなくなっちゃうじゃないですか」 「いっ、イチャイチャって!」 「当たり前でしょ? 俺はいつだって真紀にくっついていたいし、抱きたい」 「なっ……」 「ずっと好きだったんですから、浮かれるのは当たり前でしょう?」  松田くんが本当に入社した時から私の事を好きでいてくれているなら確かに二ヶ月くらい? 経っているけれど二ヶ月ってずっと好きって言えるレベルなのだろうか。もっと何年も好きでしたってのがずっとなんじゃないのかな? と思ってしまった私は捻くれているのかもしれない。   「まだ夜まで時間あるし、俺の家に戻ってもいいですか?」 「あ、そうね、大丈夫よ」 「じゃあ二人でまたまったりデートしましょうね」 「そうね……」  また二人きりになると思うと緊張が身体を強張らせる。  ふと頭の中に昨日の甘くて蕩けてしまいそうな二人の出来事がフラッシュバックし、ドキンと大きく心臓が反応する。 (まさか松田くんまたエッチする気なのかしら……)  アパートに着き松田くんに手を引かれながら部屋に入る。時間を確認するとまだ午後二時。夜までまだまだ時間はある。 「昨日真紀が借りたラブストーリーの映画見てないから見ちゃいましょうか」 「そ、そうね」  ソファーに二人並んで座り映画を見る。  隣に座って触れる肩も今では触れている方が安心でき気持ちがいい。  映画が終わるまでの約二時間、二人の肩が離れる事は一瞬たりとも無かった。 (嫌われてしまったのかしら……私何かしちゃったのかな)
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