嫉妬に狂いそうなんですー1

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嫉妬に狂いそうなんですー1

「水野さん、おはようございます」 「おはよう、松田くん」  毎朝出勤して初めに挨拶するのは決まって松田くんだ。松田くんが入社して以来、最初の頃はこの時間が苦痛でしかなかったのに今では唯一会社で二人きりになれる大切な時間に変わった。  最近ではすこーしだけ早く出勤している自分がいる。 「昨日会ったばかりなのに、早く会いたくてたまらなかったです」 「っつ……そ、そうね」  土日はたっぷりと松田くんとの時間を過ごし、途中で誠が乱入してくる事件もあったけれど、とても有意義な時間を過ごせた。 (さ、三回もエッチしちゃったしね……) 「顔が真っ赤になってますよ? 何か思い出しちゃいました?」 「なっ! ち、違うわよ! 思い出してなんかいない!」  スッと松田くんは私の耳元に顔を寄せ「昨日の真紀、すっごくエッチで可愛かったですよ」と小さな声で囁きデスクに戻って行った。 (もーーーー!!! 絶対わざとだ!)  熱くなった顔を手でパタパタと仰ぎ私もデスクに腰を下ろした。  パソコンに届いているメールをチェックし、今日の仕事に使う資料をパソコンのファイルにまとめる。  隣のデスクでは松田くんもメールチェックを済ませたところだろうか、グッと背を伸ばし眼鏡を掛け直す仕草にドキッとしてしまった。 「水野さん、あとで資料の確認お願いしていいですか?」 「勿論、あと少しで時間できるからちょっと待ってもらえる?」 「分かりました」  あと少しで終わりそうなところで視線を感じる。  もちろんその視線の持ち主は松田くんだ。 「あの……松田くん、もう少しで終わるから」 「はい、分かってますよ」  ジッと見つめるのをやめない松田くんに誰かが変に思うんじゃないかとヒヤヒヤする。 「松田~、それはバレバレよ? 顔に出ちゃってる」  ナイス涼子! と拍手を称えたい気持ちになる。 「俺が一方的に水野さんを好きって思われる分には全然いいんですよ」 「男気あるね~! 若いって凄い!」 「いや、涼子……親父みたいになってるから」 「水野さん、大好きです」 「ちょ! やめなさい! ほら、もう終わったから資料の確認するわよ!」  その場にいるのが恥ずかしくて、ガタッと立ち上がり「来なさい!」と松田くんを資料室に連れて来た。  棚にビッシリと紙の資料がファイルに挟まれて並ぶ資料室は電気をつけていても少し薄暗い。  今は殆ど使う人も少なく、いずれかは全てデータ化し、この資料室はなくなると言う噂を聞いた事がある。 「最近は殆ど資料はデータ化してるけど、昔のはまだ紙のままだからこの部屋にしまってあるのよ。松田くんに頼んだやつは昔の資料と照らし合わせた方が正確だから、ささっと見ちゃうわね」  松田くんのつくった資料は完璧と言えるほど要点をまとめていて見やすかった。これなら年配の上司らにも分かりやすいだろう。 「うん、大丈夫ね、とっても見やすい資料になってるわ」 「頑張ったからご褒美くれませんか?」 「いいわよ、何がいい? コーヒー?」 「いらない、こっちが食べたいです」  突然の出来事で目を見開いたまま時が止まった。 「んっ……」  狭い資料室に私と松田くんの吐息音だけが聞こえる。食べられてしまうかのように唇を蝕まれ、昨日の今日だからかキスだけで身体が疼く。私の身体はどうしてこんなにイヤらしく反応してしまうようになってしまったんだろう。 「ふっ……んん……」 「ご馳走様でした」  松田くんはペロリと自身の唇を舐め満足そうに笑みを浮かべた。 「か、会社でするなんてっ! 誰かに見られたらどーするのよ!」 「その時はその時ですよ。今時、社内恋愛が禁止な訳じゃないし」 「……もう! 戻るわよ!」  高鳴る胸を落ち着かせるようにフゥと息を吐き足早にデスクに戻った。  私達は毎日当たり前のように朝出勤して顔を合わせ、帰りは時間が合った時だけ一緒に帰る。それが習慣付いてきていた。  当たり前なんてあるわけ無いのに――
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