ーーーーーーーーーー松田side2

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ーーーーーーーーーー松田side2

 その涙を見てハッと俺は何してるんだ……と我に帰る。 「身体洗って出ようか、夜ご飯作りますよ」 「えっ……しないの?」 「いや、本当はめっちゃしたいですよ、もう恥ずかしいくらいに元気になっちゃってるし」 「私は……いいよ」 「真紀がその気なのは凄く嬉しいし、今すぐ抱きたいけど、泣きそうな真紀を抱くほど俺は酷い男じゃないですよ? 反対向いてるから身体洗っちゃってください、それとも俺が隅々まで洗いましょうか?」 「いい! 自分で洗えるからっ!」 「それでこそ真紀さんだな」  俺はちゃんと反対方向を向き彼女が洗い終わるのを待った。それはとんでもなく拷問を受けているような地獄な時間だった。 「洗い終わりました」 「ん、じゃあ俺も洗うんで交換しましょっか」  彼女が湯船に入ったことを確認し、俺も自分の身体を洗い先に風呂を出た。  彼女には「ゆっくり浸かってて下さい、夜ご飯の準備しておきますから」と言って出てきた。  お風呂を出てまたスーツを着るのは嫌だろうと思い、本当は彼女にあげるためのクリスマスプレゼントとして用意しておいたモコモコ素材の部屋着をバスタオルと一緒に置いておいた。  ピンク色のモコモコパーカーとショートパンツ。 これは単なる俺の趣味だ。彼女の綺麗な脚がモコモコのショートパンツから見えるとか最高すぎる。 そしてなにより前チャックのパーカーになってるので脱がせやすい。  グツグツと野菜と鶏肉を煮込み、うどんを茹でる。 最後に卵を入れれば完成だ。  卵を入れるタイミングで彼女がお風呂から戻ってきた。  俺の用意しておいたモコモコの部屋着に身を包み、頬を赤く染め「この部屋着、わざわざ準備してくれてたの?」と目を細め嬉しそうに微笑む。 「でもちょっと、若すぎない? 恥ずかしいんだけど……」なんて言いながら照れている。  あぁ、笑顔が見れてよかった。 「そうです、俺の家に泊まった時に着れると思って買っておいたんですけど早速役立ちましたね、すっごく似合ってます、可愛い」 「っつ……本当にありがとう」 「もう少しでうどんができますから、座って待っててください」  卵が半熟になったところで火を止める。 出来上がったうどんをダイニングテーブルに座って待つ彼女のもとに持って行く。  一口たべて「美味しい」と呟いた。  それがなにより嬉しい一言だ。  無理矢理聞くよりも彼女から話をしてくれるのを少しだけ待つ事にした。  きっと恥ずかしがり屋の彼女の事だから中々言い出さないかもしれない。だから少しだけ待つ。  お互い無言でうどんをすする音だけが部屋に響く。  食べ終わり食器を片している間は彼女に生姜入りの紅茶を出し、ソファーでくつろいでいてもらった。少しでも心が落ち着いてくれる事を祈って紅茶を入れたつもりだ。 「もう遅いし、今日は泊まって行きますか? その方が俺も嬉しいし」 「あ~……でも替えの下着とか無いし、今日はもう少ししたら帰るわ、急に押しかけてごめんね」  本人は元気そうに話しているつもりなのかもしれないが明らかに何かを隠し抱えている。  その抱えている何かが晴れてくれるまで彼女の側を一瞬たりとも離れたくない。 「下着は今から洗えば朝までに乾くし、スーツはシワにならないようにハンガーにかけてあるし、あー、ストッキングは今すぐにでもコンビニで買ってきますから、泊まってください!」 「あ……はい……」  そうと決まれば即座に行動。流石に俺が下着を洗うのは嫌だと言われ彼女が自分で洗うと洗面所に籠った。  その間に俺は走ってコンビニに駆け込んでストッキングとメイク落としをレジまで持って行った。  ハァハァと息を切らしながら女物のストッキングを買おうとしておる男、店員さんから物凄い変態を見るような目で見られたがそんなの気にならない。ピッとバーコード決済で瞬殺で会計を済まし走ってアパートに戻った。  俺はこの寒い季節に一人全力疾走で汗をかいていた。 「真紀! 買ってきたから明日の心配はないよ!」 「あ、ありがとう」  冷蔵庫を開けミネラルウォータをゴクゴクと一気に飲み干した。  ふとお酒が目に入り少しアルコールが入った方が彼女が素直になりやすいかな? と思いお酒を進めてみた。「飲む」と頷くので冷やしておいた缶チューハイを二本冷蔵庫から取り出し彼女に手渡した。 「これ飲んだらゆっくり寝ましょうね」  プシュッと缶を開け軽くカチンと乾杯をする。  全力で走ったからか、お酒が美味い。  彼女は両手で缶を包み込むように持ち、何かを考えているのかボーッと一点を見つめている。  特に声はかけずにただ彼女の肩に手を伸ばし自分の方に抱き寄せた。 「あのさ……聞きたい事があるんだけど、聞いてもいい?」  改まって、いったいなんだろう……
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