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 呼び出しボタンで店員さんを呼び、まずはお互いにビールをジョッキで二杯ずつ頼んだ。 (おつまみも無しか……気を張らないと)  店員さんの運んできてくれたキンキンに冷えたジョッキを持ち乾杯もせずにお互いゴクゴクとビールを飲み干す。  私よりも五秒くらい早く誠が先に飲み終えた。 「っつ……誠さん凄い、早いわね」 「だてに出版業界で働いてないわよ、飲み会の量エゲツないからね」 「誠さんって出版社勤務だっんだ! いつもお洒落だし、なんの仕事してるのかなぁって気になってたのよ」  誠が二杯目に口をつけたので私もグッと三分の一程飲んだ。 「真紀さん、何かおつまみ頼もう、胃袋が空で飲んだら身体に悪いから」 「あ……、うん! 私も何か食べたいって思ってた!」  やっぱり優しいな、と改めて思った。二人でメニューを開き、これ美味しそう! こっちも美味しそうよね! と少しお酒が入っているからか出だしよりも気軽に話せている気がする。なんだか気分は女子会をしているみたいだ。  お刺身の盛り合わせ、ササミと胡瓜の梅和え、サーモンとアボカドのカルパッチョ、唐揚げとポテトを注文し、またお互い無言でゴクリとビールを飲む。 「あのさ、誠さんは松田くんのどこが好きなの?」  無神経な奴だと思われると思いながらもお互いの共通の話がしたくて話題に出してみたら、松田くん少し機嫌良く応えてくれた。 「私~? そりゃもう最初から、出会った日から私にとって大雅は唯一無二の存在だった。大雅の言葉に私は救われたから、顔ももちろんタイプだし、あのスタイルも最高よね、それに誰にも媚を売らない所が凄く好き、なのにあんたに出会ってからはあんたに媚び売りまくり、本当見てらんないわ」 「そ、それは……なんとも言えない」  タイミングよく注文してきた料理が次々と運ばれてきたので割り箸を誠に渡し一旦会話が中断され、運ばれてきた料理を口にする。まずはお互いお刺身、海鮮居酒屋なだけあってマグロが口の中でとろけて最高に美味しい。 「んん! 美味しい~、ね! 誠さんっ」 「まぁまぁじゃん、それよりビールには唐揚げでしょ」  「だよね!」と美味しい料理のおかげかピリッとした空気はいつの間にか消え去っていたように感じた。  二杯目のビールもあっという間に空になり三杯目はお互い違うものを、誠はレモンサワー私はキウイサワーを頼んだ。 「あとは……あー、やっぱり教えない! 大雅のいい所は私だけが知ってればいいし」 「えー気になるじゃないのっ! 教えてよ!」 「絶対教えない、じゃあ次は真紀さんの番」 「わ、私!? え~……、あ! 料理が凄く美味い! 松田くんの作る料理ってなんでも美味しいのよね」 「分かる分かる! 大雅って昔っから料理が上手いの! 施設で暮らしてる時もササっと炒飯とか作ってくれて、小さい子達も凄い喜んでたんだよね」 「松田くんから小さい子って連想できないけど、面倒見は良いんだろうな~」  三杯目も届き、食べて飲んで話して、お互い五杯目まで飲んだ時には私はかなり酔いが回っていた。私特有の寒気も少しする。でも気を張ってればまだまだ大丈夫なはずだ。誠は強いと言ってただけあって顔色一つ変えていない。このままでは負けてしまいそうだ。  それだけは避けたい。今日は目的があって誠を呼び出したんだから。 「真紀さんそろそろヤバいんじゃない? もう降参しなさいよ」 「ん……まだ大丈夫っ! 吐きそうになったら負けを認めるわ、だってどうしても誠さんと分かり合いたいから」 「頑固」 「お互いに」  八杯目、流石にキツくなってきて少し目がトロンとするのが自分でも分かる。 「誠さんはほんと~にお酒が強いのねぇ、でも負けたくないのよぉ、ん~松田くんが好きなのよ~初めてこんなに好きになった人なのよ……だからって言うわけじゃないけど、誠さんの気持ちが何とな~く分かるのよぉ」 「真紀さんもうベロベロでしょ?」 「いんやっ! まだ大丈夫よ~、まだ誠さんと話したいのぉ」 「ったく……何を話したいのよ」 「ん~色々よぉ……誠さんといがみあいたくないのよ……なんだかいつか誠さんに負けちゃう気がして……不安が募ってくのよ……だったら……ともだち、ん~ライバルになりたいのよ……」 「真紀さん……大丈夫?」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ、まらまだ負けないんだからね~、誠さんには負けないんだからねぇ……」  私は誠とは友達、いや、ライバル的な存在になってでもいい、仲良くしたいのだ。綺麗事だとは分かっているけれどこれから松田くんと一緒にいるのだから誠とは切っても切れない縁になるだろう。だだただ友達になりたい。そう思って今日は来たのだ。  同じ人を好きな分、なんだか誠と腹を割って色んなことが話せた気がして気持ちがふわふわしていた。  ふわふわした気持ちからハッと覚めた時には何故か松田くんのベットの上にいた。 (え!? 何事!?)
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