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ーーーーーーーーーー松田side2
「当たり前だろ? 好きじゃなきゃこんないい歳した大人になっても一緒にいないよ、誠は家族同然なんだからさ」
誠は夜空を見上げ、まるで星を手で取ろとしているみたいに両手を上げ「あ~! 大雅スキー!」と大きな声で叫んだ。
「おまっ、酔ってんだろ!?」
「もちろん酔ってますよ~、大雅スキスキスキスキ~真紀さんも少しスキ~」
「ったく、ほら車着いたから早く乗れ」
後部座席にそっと彼女を降ろし横に寝かせると少し位置が悪かったのか、ンンッと身体をモゾモゾさせフィットした位置が見つかったのかまたスースーと寝始めた。なんだろう。酔っているせいか彼女の頬は薄紅色に染まっており、スーツも乱れている。時たま漏らす声が色っぽ過ぎて、いつもスーツ姿はキッチリしている彼女が乱れているのを見ると無性に抱きたい欲が湧き上がる。もっと乱したい……
「ちょっと大雅、真紀さん見てフリーズするな!」
「あ、あぁごめん、つい真紀が可愛くて見入ってた」
「常に惚気かよ……あーもう! 二人とも幸せになれ! じゃなきゃ許さない!」
「何だよ急に、当たり前だろ? 真紀の事は絶対に幸せにするから」
彼女の事を幸せにするなんて当たり前の事、それ以上にもっともっと俺と一緒にいて楽しんで欲しい、安心して欲しい、喜怒哀楽全てを俺に曝け出して欲しい。彼女の為なら何でもできるだろう。
誠を助手席に乗せアパートまで送る車内は彼女の寝息しか聞こえないくらい静かだった。
「ん、着いたぞ」
ガチャと無言で車を降りるなり誠は外側からコンコンと運転席の窓を叩き「窓開けろ」と手でジェスチャーをしてきた。全開にするとせっかく暖まった車内が冷えてしまうと思い半分だけ窓を開けた。
真冬の冷えた空気が車内に流れ込んでくる。
「どうした?」
なかなか話出さない誠のいつもと違う雰囲気に何か違和感を感じた。酒を飲んでいるせいか誠の目は少し赤く充血し潤んでいて、何度も深く息を吸いハァと深く吐いては口をムッとつむっている。まるで小学生の時の誠を見ているようだった。
「……あのさ、私、大雅の事ずっと好き」
「ん、あぁ、俺もだよ」
子供の頃から何回、何十回と聞いている誠の好きに俺はいつも適当に返事を返す。
好きと言っても友達としての好きだと思っていたから今日の誠からの好きを流すように返事をした。
「多分大雅が思ってる好きと私の思ってる好きは違うと思う。私は大雅の一番になりたかった。……本当はずっと言うつもりなかったけど、真紀さんには負けたわ、大雅が一目惚れするだけあるね」
潤んでいた瞳からは涙がポロリと溢れ、それを気にするな! と言っているかのように誠は満面の笑みで笑った。今まで女装している誠を綺麗と思った事は一度も無かったのに、何故か今目の前で目を潤ませ満面の笑みで笑っている誠が凄く綺麗に見えた。
「……っと、その、気づいてやれなくてごめん、誠の事は家族として好きだよ、でも俺の一番は真紀であって愛してるのも真紀だから」
「分かってる分かってる! あースッキリした! 最近凄いモヤモヤしてたんだよね! なんか自分がどんどん嫌な奴になっていく気がしてさ。これからも今まで通りにしてよ? じゃあ、おやすみ~!」
誠は一度も振り返る事なく足早にアパートに入って行った。
「はぁ……」
思わずため息が出た。こんなにもずっと一緒にいた誠の気持ちに気づかなかった自分に腹が立つ。
誠が今までどんな思いで俺と一緒にいたのだろうか。
だから真紀に一目惚れする前までに付き合った今までの元カノに対しても態度が少し冷たかったのだと今更ながらに納得ができた。
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