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誠がヒョコッと顔を出し「驚いた?」と少し照れながら笑っている。
「えっ!? 誠さん!?」
「おまっ、え、急にどうした!?」
私も松田くんも驚きを隠せない中、誠が玄関から出てきて更に驚いた。いつも可愛い服装だった誠とは打って変わって男物のデニムにVネックの黒いセーターを着ていた。
「もう女装する意味もなくなったし、イメチェンしてみたんだけど、どう?」
女装する意味が無くなった?
言う誠の発言にハッとした。
昨日の様子の変だった松田くんと女装を止めた誠が点と点で綺麗に線が繋がったように納得ができた。
「凄く良いと思うわ! 女装している時も凄く可愛かったけど、男の姿も凄くカッコいいわね! 声もこれが誠さんの本来の声なの?」
「そうだよ、あの声出すの結構大変だったんだよね~喉痛めたら終わりだし」
「そうだったのね! あービックリした! ね、松田くん、ま、松田くん?」
反応がない松田くんを見ると明らかにムスッとした顔で怒っている。
「え……ど、どうしたの?」
聞いてもムスッとしている松田くんを見て、誠がお腹を抱えて「あー分かりやすすぎ!」とケラケラ笑い出した。
「あのね、真紀さん、大雅は多分俺の事を真紀さんがカッコいいって言ったことに対して焼き餅を焼いてるだけだと思うよ、だろ? 大雅」
ま、まさかそんな事で? と思ったがその通りだったらしく、「そうだよ、俺だってカッコいいって言われたことないのに……」と口を尖らせていた。
いや、今の状況はカッコいいと言うより可愛い……、でも可愛いと言ったら地雷を踏みそうなので言わずに心の中で可愛いー!と私は叫んだ。
「あ、そうそう、昨日の支払いなんだけど金額いくらだったのかしら?」
「あ~来てもらっといてあれだけど、昨日のはいいよ、俺からの二人へのお祝いって事で」
「えっ、それは駄目よ! そもそも私が誘ったんだから、じゃあこれ」
はい、と無理矢理誠の手の中に一万円札をねじ込んだが「要らない」と返された。
拗ねていた松田くんが「じゃあ遠慮なくカッコいい誠くんにお祝いされよう」と嫌味たっぷりに返事を返した。
「なっ、何言ってんのよ!」
「あ~本当大雅面白すぎ、俺が誰かと付き合ったらその時は大雅も祝えよ?」
「当たり前だろ? 俺と真紀で盛大に祝ってやるから」
笑いながらサンキューと言う誠の目が少し潤んでいたことに私は気づかないふりをした。多分同じように松田くんも気づかないフリをしていたと思う。
「じゃあお言葉に甘えて……、誠さん、また飲みに行きましょうね」
「もちろん、次は潰れんなよ?」
「いや、二人で行かせないから! 俺も行くからな?」
心の底から三人で笑い合えた気がした。
結局誠に昨日の分はご馳走になり誠のアパートを後にした。何となくだが松田くんと誠の雰囲気も良い方に変わった気がしたのはそっと胸の中にしまっておく。
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