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 皺にならないようクローゼットに掛けてあった黒のロングワンピースに着替える。長袖部分がレースになっていて腕部分の肌が透けて見えるところが一目見て気に入ったのでこのワンピースを購入した。  髪の毛は丁寧に巻いてからアップにしバレッタで留めた。   (この格好ならお洒落なレストランでもきっと大丈夫だよね……)  よれていたメイクをキッチリと直し、会社より少しチークを濃いめに塗り、リップも色の濃いものを塗り直した。全身鏡で隈なくチェックし、変なところはないか確認し、ベージュのロングコートを羽織る。  スマホで時間を確認するとちょうど松田からのメールが届いた。 "あと五分で着きます"  思わず笑みが溢れる。いつもちゃんと五分前に連絡してくれるところは出会った時から変わっていない。  黒のパンプスを履き玄関を出るとちょうど松田の車が到着した所だった。  運転席から降りてきた松田くんは会社の時と同じスーツなのに髪型が少し違うだけで雰囲気がガラリと変わる。会社ではいつもあげている前髪を斜めに流しており眼鏡は外している。  松田くんの綺麗な黒い瞳がしっかりと見え、眼鏡を外すのはキスがしづらいからとこの前言っていたのを思い出して思わずドクンと身体が疼いた。 「うわ……めっちゃドレス似合ってます! 髪の毛アップにしてるの初めて見たし、凄い可愛い、特にこのうなじの部分が色っぽすぎ」  首の後ろに松田くんの吐息が当たり背筋がゾクゾクと波立つ。 「ま、松田くんも……やっぱ何でもない! 早く行きましょう!」  松田くんはクスクスと笑い「はいはい」と車に乗り込む。  予約してあったフレンチレストランまで車で三十分程で着いた。  その間の車内では松田くんがずっと私を可愛い、綺麗だの褒め続けるのでずっと私の身体は嬉しさと恥ずかしさで沸騰したままだった。  松田くんは車のドアをさりげなく開けてくれエスコートをしてくれる。この男は出会った時からいつもスマートだ。  スタッフに案内されレストラン内に入るとまるで外国に訪れたのかと思うくらい非日常的な空間。床は大理石で輝いており、上を見ればシャンデリアが煌びやかに輝いていている。壁に掛かっている絵もどれも個性的で目を引かれる物ばかり、素敵すぎてつい周りを見渡してしまう。  さすがはクリスマスイブ、店内はカップルや夫婦が多くBGMのクラシックの音楽が静かに流れ、大人の雰囲気が漂っている。  光沢のある白いテーブルクロスが上品な席に着くと既に料理は松田くんが注文済みだったのかスタッフが食前酒を注いでくれた。  テーブルコーディネートもクリスマス仕様で凄く素敵だ。テーブル中央に飾られている花は真っ赤な薔薇。綺麗に折られたボルドー色のナプキンはもう芸術品の様だった。 「すっごく素敵な所だね」 「ですね、なんでこんな所誠のやつ知ってたんだろう」  料理も運ばれて来て松田くんとの何気ない会話を楽しみながらフレンチを堪能した。  どれもちょうどいい量でやっぱりお肉が絶品。柔らかくて美味しかった。  食後のデザートのクリスマス限定フルーツのケーキもペロリと頂いた。  ゆっくりコース料理を堪能したので既に時刻は九時を回っていた。  バックに忍ばせているプレゼントを渡すタイミングが掴めず「そろそろ帰りましょうか」と松田くんが言うので「そうね」と彼の後を着いていく。  会計はどうするんだろうと私が一人あわあわしていると「ここは俺からのプレゼントですからね」と小さな声で耳打ちすると支払いは松田くんが既に済ませてくれていたらしい。私は素直に「ありがとう」と言うことができた。  帰りの車の中ではプレゼントはいつ渡そうかと私の頭の中はプレゼントでいっぱいだった。  いつの間にか松田くんの家に着いていてウーンウーンと悩みながら歩いていたらあっという間に松田くんアパートの中にいた。 「真紀」 「は、はいっ!」  思わず力んで返事をしてしまった。クスクスと笑う松田くんに吊られて私も笑ってしまう。 「とりあえず入ってください、寒いでしょう」   リビングに入り二人で気が抜けたようにソファーに座る。 「美味しいけどやっぱりかしこまった場所は疲れちゃいますね」 「そうね、美味しいけど私は松田くんの作ったご飯の方が好きだわ」  ギジリとソファーが軋み肩に重みを感じる。松田の頬が私の肩に重なり肩が熱い。ハァと溜息をつく松田くん。 「なんでそんなに嬉しいことばっかり言ってくれるのかなぁ……」  顎を触られ、ゆっくりと顔を近づけ唇を重ねる。息をするのに口を開けた瞬間にすかさず松田の舌が私の中に入ってきて、舌を絡め取るように吸われ舌の付け根がジンジンする。お互いの唇からは最後のデザートで食べたフルーツケーキの味がした。 「真紀」  力強い瞳、真っ直ぐに見つめられ息をするのを忘れるくらい彼の視線に囚われた。
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