浦島太郎

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浦島太郎

https://estar.jp/users/741400360 碧(Aoi)さんのご提案 桃太郎の鬼を登場させた時 僕も浦島太郎のことを考えましたが 難しいからやめておこうと放置した 患者でした(汗) b698b591-d20a-452b-b360-3ffe5d242c6e  その夜、診察室に現れた男は皺枯れた声で長い話を始めた。  彼は約1300年前に亀を助け竜宮城へ行った浦島太郎だった。  私は亀を助けた。  亀のためだと思った。  それが私の間違いだったのか?  自分の勝手な思い込みで余計なことをしたのかもしれない。  竜宮城へ行った。  乙姫様と結婚し幸せに暮らした。  私は心から姫を愛し大切にした。  そのまま永遠に竜宮城で姫を抱いていればよかった。  ふと年老いた両親のことを思い出した。  行方知れずになった私を心配していると思った。  それが思い上がりだったのかもしれない。  自分の存在など誰も気にかけていないのだ。  結果的に私の犯した大きな間違いは  現実に私を愛してくれている姫を裏切り  想像の世界で私を心配しているかもしれない両親の元へ  帰ろうと決断したことだ。  現実を大切にできない人間が  想像の世界で幸せになれる訳がないのだ。  『目を覚ませ!』  玉手箱の煙は私にそう言いたかったのだろう。  こんなに老いぼれてしまっては  姫の元へ戻ることもできません。  どうぞ愚かな私を安楽死させて下さい。  よろしくお願い致します。  彼は非常に謙虚に反省していたので  僕は若返りの薬を処方した。  若返った彼は喜んで竜宮城へ戻った。  数日後スマホに写真が送られて来た。 『竜宮城で姫と幸せに暮らしています  ありがとうございます  このご恩は一生忘れません』  とのこと。  よかった。  皆さん、もう心配はいりませんよ。   6302fea6-eafb-4e0f-9341-70341dac9ef1
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