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2.橘百音
大好きな人がいた。生真面目で繊細でいつも困った顔をしている人で、逆にそれがほっとけなくて、相談というか愚痴のようなものを散々聞かされたが、それでも嫌な気がしなかったのは、愚痴の端々にも優しさが垣間見えたからだ。
私が一回言ったことは大抵覚えていて、冬はホットココア、夏はジンジャーエールが好きだと言ったら、会う時は必ずそれを用意してくれていて、自覚しているかは分からないが、どうしてか、ちょっとだけ困り顔で手渡してくるのだ。少しイタズラをして、それがバレてしまった柴犬みたいに見えて、とにかくとにかくとにかく――可愛かった。
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