2.橘百音

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 覚悟も決心も持てないまま、当日になった。多分、私は彼のプロポーズを受ける。交際を申し込まれた時、首を縦に振ったように。そして恐らくその判断も――正解だ。    夕方、普段より少しフォーマル気味な服をまとって、私は待ち合わせの駅前に向かった。    百貨店の脇を抜け、駅前のロータリーが目に入ってきた時、不意に私の進行を妨げる影が現れた。    目を見開く。    ――アイツだ。アイツが目の前に立っていたのだ。
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