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ひまわり対神
あああああ!
ヘスティアが叫び、ユノは、上空に作られた場所に立っていた。
ユノとヘスティアの周りには4本の綱と、柱があった。
リングの中央で、ロリっ子2人は、レフェリーに反則行為の説明を受けていた。
「姉ちゃんが得意とするのは、ウエスタンスタイルのラフファイトだ。姉ちゃんのスピニング・トー・ホールドは真に恐ろしい。 思い出すだにあれが縮み上がる」
お前は何を言っているんだ?
そして、ユノとヘスティアのファイトが突然始まった。
手を握り合っての力比べが始まった。
俺はまだ見たことがないし知ることもないが、ヘスティアは海外の流れを汲むレスラーだった。
ユノを思いきりロープに投げた。
物凄い力でロープが伸び、弾き返されたユノの首を、ヘスティアの細腕が刈った。
「首がもげるようなラリアットだ。2回転してマットに沈んだな。と言うか、あのくまさんは何だ?どうだ実況のジョナサンよ?」
気付くと、俺達はリングサイドの机に座っていた。
誰が実況だ。
って言うか、セコンドポジションにいるサゲンタって一体。
起き上がったユノの背後に回ったヘスティアは、ユノを抱え上げた。
そのまま、ブリッジしてユノをマットに沈めた。
「ジャーマンが見事に決まった!そのままフォールする気だ!スリーカウントで勝敗が決まる!」
「何やってんだお前等は?!ユノ!気を付けろおおおおおおお!」
恐ろしい腹筋で、ユノは跳ね上がった。
すぐさま足を掬い倒し、足を捻ろうとした。
「スピニング・トー・ホールドだ!」
足を持って回ろうとしたヘスティアの顔に、ゴス。とユノの拳が突き刺さった。
スピニング・トー・ホールドには弱点があった。それは、
「足掴んだ状態で回りゃあそりゃあ殴られるだろうが」
「馬鹿な!技に移行した段階で、終わるまでじっとしているのがお約束ではないのか?!避けてはいかんのだ!受けてこそのプロレスだろうに!」
「知るかあああああああボケええええええええええええええええ!ユノ!この馬鹿避けないから好きに殴っていいぞ!」
その時、ゆらりと立ち上がったヘスティアは、背後に何かを握っていた。
「おいいいいいいいいいい!そこの!審判か?!何か握ってんぞこいつ!」
レフリーが見ると、何も握っていないってポーズをしていた。
レフリーが再開すると、ヘスティアはそれでガス!ガス!っとユノの頭を殴った。
「おいいいいいいいいいい!ユノ出血してんぞ!どうなってんだおい!」
レフリーが手を見せろってやったが、ヘスティアは何も持っていなかった。
「リングの上には何も持ち込まないのが掟だ。なのに、姉ちゃん。どうしてルール無用のラフファイトをするのだ?あああああ!また持ち上げた姉ちゃんの!オクラホマスタンピードだああああ!バウンドして悶絶するひまわりいいいいいいい!ああ何とかして立ち上がったがぁ!そのまま姉ちゃんのパンチラッシュラッシュラッシュウウウウウ!恐ろしいナックルパートでひまわりはフラフラだああああああああ!ああっとそしてええええ!姉ちゃんのフィニッシュブロー、テキサス・クローバーフォールドだああああ!倒れたひまわりにフォール!カウント2でブレイク!ひまわりの逆襲はなるかああああ!ああ!ひまわりのベアハッグに対し姉ちゃんが!頭を掴んだあああああ!さながら地獄の爪クローだああああ!負けるな!バッファーーひまわりいいいいい!しかしああ!逆さに持ち上げたああああああああああああああああああ!!スカートが捲れてくまさんが!あああああ!くまさんが泣いているううううう!どうでしょう実況解説のエルネストさん?」
「そうですねえ。片手で軽々と持ち上げましたねえ。これからどうするか。っておおおおおおい!お前何呑気に実況してんの?!そして沸くな観客お前等ああああああああああああああああああ!!よく見たらマサルにヒョウシチ!おさびし村民が!そこのジジイ達呑気に茶あ飲んでんじゃねえええ!あんた誰だあああああああ?!」
「ちなみに今回観客席に招待されたのは、ひまわりのお膝元からやって来ましたおさびし村老人会と子供会のメンバーです。あ、ニコニコ笑って手を振ってるのはひまわりのお婆ちゃん、サクヤ・ヤマトさんです」
「久し振りいいいいいいいい!何してんの婆ちゃん?!あれだ!揃って襲いかかれええええええええええ!何でユノ、ヘスティアと肉体的なマッスルアーツの掛け合いやってんの?!」
「ああああっと!姉ちゃんが思いっきりひまわりをマットに向かって投げたあああ!まさに地獄の超特急ううううううう!ああ?!ひまわりがマットに手を突き、カポエラの如く姉ちゃんに反撃だ!カポエランレッグラリアート!堪らず姉ちゃんマットに倒れ込むううううううう!まさに試合はケーブラジェレーバケーブラの様相を呈して参りました!」
いつの間にか完全に実況になっていた蜂の姿があった。
改めて理解した。
こいつ等本物の馬鹿だ。
そして、うちの身内もだった。
ヘスティアのナックルパートとユノの乱打が激しく激突し、さながらララパルーザ(何だルーザて)の様相を呈した時、乱入してきたのは、愛人でなくて、俺の奥さんだった。
「あんたあああああ!よくもやってくれたわね?!ユノに何してんのあんたはああああああああ?!」
「ああっとここで突然の乱入だああああああああ!コーナーポストの上に立つのはああああああ!まさかのタイガージェット・フランの登場だあああああああ!」
「やっと姿を現したら、特設リングでプロレス?呆れてものも言えないわ」
「ガイア!って言うかフラさん」
何これ?
フラさんは、抜いたサーベルをぐにんと曲げて言った。
「貴女、神なんですって?貴女と戦ったりしないわ。でも、戦わなくても、貴女を負かす方法はある。私、フランチェスカ・ルバリエ・エルネストは、神ヘスティアに挑戦する!」
「今いいとこなん。邪魔すんなや。頭押っぺすぞ」
「武器を取りなさい!女の武器を!キッチンの守護者は、これを見て放っておけるの?」
「そ、それは?!まさか?!」
驚愕したヘスティアは、フラさんの腰に視線を注いでいた。
フラさんは、腰に挿したそれを示して言った。
「私の料理に勝てる?ヘスティア」
自信タップリに言ったフラさんは、フライパンを持っていた。
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