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団欒と友達
在校中の居残り組は、便宜的に寮が与えられていた。
ユノの居残りに際して、俺はユノと、泊まり先に対して取り決めていた。
独身寮に泊まるのは隔日にしてあったので、今日は素直に王城に帰ってフラさんと過ごしていた。
「ただいまー。おおフェリックスー。元気にしてたかー?」
いつものようにうなじをクンクンした。
あれ?リーゼロッテの匂いがするな。
「フラさん。フェリックスからリーゼロッテの匂いがするな?ステラはまたサウス・フォート?」
「ええ。この子リーゼロッテが大のお気に入りらしいわよ?また魔王に何か送らないと」
うちの産婆がなあ。
そう言えば、あいつ今幾つだっけ?
ああ、あいつハタチだったよな。
愛人で最初のハタチだっつって素っ裸で襲いかかってきたんだった。
悪いが、俺はリーゼロッテを妊娠さす気はない。
「貴方、ユノの論文は順調?」
LDKのキッチンから、フランチェスカのいい匂いがしていた。
卵たっぷりの肉料理だな。
ミラージュから俺を取り返してから、妙にフラさんは俺を放したがらなかった。
そりゃあ、俺だってキッチンに立ったフラさんのスカートを捲り上げ、プリップリのお尻を思いっきりパンパンしたかったさ。
ミラージュとの諍いを越えて、フラさんから安全日と言う概念が消えた。
いつでもオッケーになってしまうと、流石に飽きるって訳でもないが、たまには他の愛人と過ごしたくなる気持ちを、フラさんはそっと汲んでくれた。
ただ、嘘だけは吐かないでね?平等破ったらぶち割るわよ?
はい。正直に伝えましたとも。
2日かけてしましたともさ。朝ワンも当然に。
ああそれでか。フェリックスからリーゼロッテの匂いがしたのは。預かってくれたんだった。
「駄目だホントにあいつ等。今日は子供の論文の書き方講座したよ。ブリュンヒルデはともかく、ユノがちゃんと卒業出来るか頭が痛いよ」
「あら。でも、可愛がってるんでしょう?相互平等条約締結の立役者だもの。カノンちゃんも可愛いし。トモエさん達の引っ越しは済んだの?」
イシノモリ・サゲンタ、トモエ夫妻は、イースト・ファーム建国からしばらくして、ユノの住まいの王宮の離宮近くに引っ越していた。
今はアカデミー近隣の土地で、趣味の農作物栽培を、俺の親父と楽しそうにやっていた。
イースト・ファームならサクヤ婆ちゃんが、アカデミーならトモエさんと、王宮ならリーゼロッテと、カノンの託児相手は充実していた。
なので、ユノは生徒に専念出来るのだが、問題は、あいつの論文制作能力だった。
初年度の進級論文は、恐ろしいひまわりの、朝顔の絵日記だった。
しかも、夏に枯れてしまってトンニュラが食べちゃいました。モグモグモグ。で唐突に日記は終わり、日記帳はほとんどが白紙で提出された。
稚拙きわまりない筆致のスライムが朝顔を食っていた絵は、年明け最初の夢として俺を襲った。
本来ならとっくに留年しているはずだったが、生憎ユノはトップシークレットな存在だった。
経済協力連合との戦いの主役を、留年させる訳にはいかなかった。
一生懸命言い訳したさ。
本来ならひまわりはカッパーか、少なくともプラチナにする選択もあったが、論文の言い訳工作の所為で、全くランクは変わらなかった。
頼むぞユノママ。お前が卒業出来んと俺が困るんだよ。
俺は教員として、とても可愛いロリママ愛人に思いを馳せていた。
居残り組の寮で、ユノはやっぱりしょんぼりしていた。
「どうだったんよユノ?今日の講義は?」
「え?いませんでしたか?ティア」
ユノの前の机の椅子に座っていたのは、ユノよりも年下に見える娘だった。
「いる訳ねえじゃん。あんなクソ犬の講義なんか。どうせワンワン言ってたんじゃねえの?」
ちょっとムッとして、ユノは応えた。
「怒ってましたよ?先生。だからといってクソ犬とか、ワンワンとか。カノンちゃんの父親ですよ?それより、いなかったんですか?今年も留年しちゃいますよ?」
「はっ。別に構わなかんべや。留年したってさあ。あたしは永遠にアカデミーのキッチンを守る。それだけだ」
「そうですか。それではティア。明日私と買い物に行きませんか?講義は午後からですし」
「何買うん?」
「ミラリンという、友達が開いた服屋さんがあります」
「あれか?スケベなパンツか?」
「ティアも、買っておいた方がいいですよ?いつ脱がされるか解らないのが人生です」
「世界が滅ぶかも知れん極限の状況で、エラルにソルスに見出だされてんのにな。その舞台の真ん中で?あの馬鹿犬が。あたしは絶対にそうはならん。あたしのパンツ脱がそうとする奴は頭押っぺす。既にあたしの口にイチモツ突っ込ました絵え描いた馬鹿の頭は押っぺした。向こうの方でな?」
彼女は何を言ってるんでしょうか?
「まあ行ぐよ?キッチングッズも買いたかんべ」
けったいに訛る少女はそう言った。
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