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一日目。
___カッカッカッカ___
ここに一人。
目の前にいる囚人達の性質を知って心を痛めている看守がいました。
見兼ねた看守は囚人達に声をかけました。
看守長
「なぁお前達、聞いてくれ」
囚人A
「ちっ、うるせーなっ! いい加減にしろよっ! 反省しろとか被害者がどうたらってんだろ? 俺は死ぬんだ。最後に何を考えてようが勝手だろうがよっ!」
スキンヘッドの凶悪な顔面をした囚人は、
睨み付け、その顔と罪に恥じぬ悪態をつきました。
それを正面から見据え、看守は続けます。
看守長
「そうか、成る程………。なぁ、他の者も一緒か?」
囚人B
「オイラをこんな奴と一緒にしないでくれよ? でもさ、死んだ奴等だって、死ぬ間際までは面白おかしく好きに考えて暮らしてたわけだし、不公平じゃないか。アイツ等は結果として運悪く死んじまっただけなんだからさぁ」
看守の言葉に、人の好さそうな感じの囚人Bは答えました。
それに続き、真面目そうではありますが、少々神経質な感じも受ける囚人Cも言いました。
与えられた部屋も他の二人より綺麗にしているようです。
囚人C
「私は死ぬまでの日々を平穏に過ごしたいだけなのです。人を殺したことは事実ですし、刑についても納得はしています。しかし、死は恐ろしい。いつ執行されるかわからない恐怖を、毎日味あわされる謂れはありません」
三人の囚人の考え方を聞いて、看守は興味深そうに頷きました。
看守長
「成る程な。多少の違いはあれど、全員こう言いたいんだな? 人を殺し、その事で自分も殺される。それには納得している。しかし、被害者達も、死ぬ寸前までは生を謳歌していたのだし、自分達も処刑日を知り、刑のその瞬間までは生きたいように生を謳歌できなければおかしいと」
囚人C
「その通りです。執行日を教えて欲しいのです」
囚人B
「そうしたら覚悟決められるしねぇ」
囚人A
「めんどくせぇこと言ってんじゃねぇよ! どうせ死ぬんだから、なに考えても一緒だろって話だっ!」
反省の一つすら見せない彼等の態度はかなり腹の立つものではあります。
ただ、彼等の言い分も少しわかりました。
近代とは違い、刑罰による死刑とはいっても、
その方法は、現在の私達では考えもつかないよ
うな方法で命を奪うものだったりしますから、
恐怖するのは無理もない話です。
看守長は彼等の意見に理解を示し、言いました。
看守長
「成る程、成る程。
まぁ、感情としては到底、受け入れられないが、お前達の主張も一理あるような気がするよ。この件は持ち帰って、検討してみようと思う」
人を死に至らしめたというのに、
その事には微塵の後悔も反省もしていない死刑囚達。
そのことには大変業腹の看守でしたが、
主張している内容には一定の理があると思う部分もありました。
そこで、この件を上司や部下に話してから、
様々な関係者の意見を集めて、検討してみる事にしました。
___コッコッコッコ___
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