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(でも景は頑張ってるよ、なんて言葉は逆効果なんだろうな)
なんと言葉を彼にかけようか。言葉に迷いながら御堂は三神峯をさらに強く抱きしめれば、三神峯も少し迷ったように言葉を詰まらせたあと、振り向いて柔らかく笑った。
「……ごめんね、こんなこと話して。和樹だって、大変なことはたくさんあるのに。文句言わないで行動に起こせって感じだよね」
これ以上は話せない、話してはいけない。三神峯の表情はそんな表情だった。
きっと、もっと話したいことはあるだろう。だが、彼は他人に悩みや不安を打ち明けることをためらっているし、そもそも嫌なことを休日に思い出させるようなことはしたくない。
これ以上はかえって三神峯自身の負担にもなり兼ねないと追及することを諦めて、御堂は話題を変えようとふと部屋の時計を見上げた。
部屋の時計はまもなく8時を回るところだ。
「……何か食べる? 食パンが残ってるんだよね。フレンチトーストでも焼こうか」
「あ……うん、ありがとう」
「ね、少し待ってて」
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