ep.7

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 三神峯を救う言葉は、もっと他にもあったのではないか。三神峯の仕事内容も部署の雰囲気も把握していない御堂が大丈夫という言葉を軽々しく使って、かえってプレッシャーをかけてしまったのではないだろうか。  滑らかな肌や抱きしめたときの華奢な体の感触を思い出すたび、御堂はずっと何もできない自分を責めていた。 「……お前、前みたいに自分を追い詰めすぎるなよ。営業部のお前がどれだけ足掻いても、部署が違えばどうすることも出来ねえだろ」 「……だよねえ」  珍しく肩を落とした御堂に、金剛沢は慰めの意味も込めて口を開く。 「まあ、研究課がいろんな意味でやばいっていうのは俺も4月から聞いてたうえで何もしようとしなかったから俺の方がタチ悪いか。正直、あの課は三神峯がいなかったら回らねえよ。今年に入ってから新薬の開発に力入れてて、普段以上に案件が多いしな」  何とかしてやらねえとなあ、と煙と一緒に言葉を続けた。 「……いつもなら男なんだからしっかりしろ、って言いたいところだけど、さっき初めて三神峯を見てそうは言えなくなった」 「え、意外。初めて会ったの?」 「会わねえよ。研究課は基本、三神峯みたいな若手は研究室に缶詰めだしな。まああいつは報告書まで抱えてるし、接点がなかったわけじゃねえけど。接点があるとすればチャットでやり取りするくらいだな」
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