ep.7

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「ああ、なんだ……そういうことか。それならまあいいや。いや、よくないんだけど」 「なんだよ……、調子狂う」 「金剛沢はムッツリだから、いかがわしいことしたんじゃないかって思っただけ」 「はあ!? お前、歳上に向かって……!」 「まあまあ、同期じゃん、俺たち」  ようやく吸い終わった吸い殻を灰皿スタンドに捨てて、御堂は肩をすくめる。金剛沢とは歳こそ違うものの、同じ時期に入社した同期だった。毎年何百人と入社するこの会社では同期全員と顔を合わせることすら難しいが、入社したばかりの頃、御堂は金剛沢のことを頻繁に訪ねていたのだ。 「……あの頃は毎日のようにこっちに来ては薬のこと聞いてきたもんな。新人のくせによく物怖じもせずにこのフロアに来れたよ」 「お陰様で。あの時はとにかく必死だったんだよ」 「あんなことするのお前くらいだよ。そんだけ勉強熱心だったってことだけどな」  今度は金剛沢が肩をすくめる番だった。  そんなこともあったなと二人で思い出に何となく更けていれば、ふと御堂の社用のスマートフォンが鳴り響いた。
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