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「ごめん、電話。……はい、御堂です。どうした? あー、そこの診療所は……」
おそらく部下からの電話なのだろう、御堂が話す内容的に、御堂がフロアにいないから連絡をしてきた、という様子だ。それだけ頼られているんだな、と思いながら金剛沢は3本目の煙草を取り出した。
「ごめん、呼び出しくらったから戻るね。話聞いてもらって少しすっきりしたよ」
電話を終えると御堂は電子タバコのカートリッジを内ポケットにしまいながら喫煙ルームの出口に向かう。その背中に金剛沢は呼びかけた。
「御堂、三神峯のことは俺も気にかけとくわ。そのほうがお前も気が楽だろ」
「ありがと。……あ、でも」
「なんだ?」
喫煙ルームを出る御堂が、徐に振り向く。
「景はあげないから。そこんとこよろしくね」
御堂の言葉に、金剛沢は取り出したばかりの煙草をカートリッジにセットする手前で落としてしまう。女性がひと目で恋に落ちてしまいそうなウインクを残して御堂は喫煙ルームを出ていった。
「……はあ!?」
御堂の言葉の意味を理解したのは、彼が喫煙ルームを去ってから数秒後だった。
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