ep.8

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「三神峯さん、またこの時間まで?」 「……すみません。またよろしくお願いします」 「無理だけはしないでくださいね。カードキー、たしかにお預かりします。お疲れ様です」  毎日明け方まで残っているせいで、守衛の警備員ともすっかり顔なじみになってしまった。労わりの言葉をかけてくれる警備員に頭を下げ、オフィスのカードキーを預けて会社を出る。  冬に向かうばかりのこの時期は、4時を過ぎてもまだ暗いままだ。三神峯はマフラーに顔を埋めて歩き出した。 (明日は午前中のうちに報告書を完成させて、中田主任に見てもらって……。あ、明日じゃなくてもう今日か)  そういえば家の冷蔵庫に何も入っていなかった気がする。まあいつも何も入っていないけど。せめて一日に1回は何か口にしなきゃ薬も飲めないなあ。  そんなことを考えながら、ただひたすらに家までの道のりを歩く。この時間でもスーツを着て歩いている人はこれから仕事なのだろうか、それとも自分と同じように残業だったのだろうか。車通りが全くないわけではない東京の街は、やはり眠らないものだ。 (ゼリーでも買って帰ろうか……)  ふと思い立って茅場町駅の近くにあるコンビニに寄り、適当に栄養ドリンクと経口飲料ゼリーを手に取る。少しでも固形物を取ったほうがいいとサラダや即席の春雨スープなどを買ったこともあったが、いつからか結局食べきれなくなり、買うのをやめるようになった。 (あ、今日、水曜日か。シャワーする前にごみ集めておこう……)
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