ep.8

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 定期検査よりも2週間早い来院だったが、総合受付に事情を言うと症状を聞かれてすぐにいつもの科に向かうように言われた。  いつもの科では処置室に通されたと思えば慌ただしく検査が始まり、処置室の次は検査室に案内される。採血もレントゲン撮影も、あらゆる全ての検査を行ったような気がした。流れ作業のように検査を受けていく反面、突然バタバタし出した院内に嫌な予感が拭えなかった。 「三神峯さん、診察室まで歩けますか? 吐き気はないですか?」 「はい、大丈夫です」  検査が終わってから診察室にはすぐに案内された。緊急とはいえ予約をとっていなかったからかなり待たされるかと覚悟をしていたが、どうやらどの患者より優先されたらしい。もともと予約をとっていたであろう他の患者には申し訳なく思いつつも、早く診察が終わればその分早く出社できる。急ぎの仕事を控えている三神峯にはありがたかった。 「……景くん、顔色ひどいじゃないか」 「……先生」 「椅子じゃなくて、ベッドに横になって」  診察室に入ると、目の前の医者は頭を抱えて深くため息をついた。何も気にしていなかったが、今日は主治医が外来の日だったらしい。先生なら話が通りやすくて助かるかも、と促されたベッドに横になりながら三神峯は思った。 「検査の結果出たけど、もうかなり悪い数値なんだ。今朝吐いたっていう血はどんな感じだった? 色は? 黒っぽかった、とか」 「普通に胃液と一緒に出て赤い血、でした。黒くはなかったです」 「そう、胃痛や腹痛は吐いたら軽減された?」
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