1490人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
ep.2*
※この先痴漢表現がありますが、行為を助長するものではありません。
* * *
「唇、腫れてるし……」
展示会ブースで御堂の部下である諏訪と関西支社の営業部社員に挨拶をしたとき、唇、どうされたんですか、と訝しげに問いかけてきたのは諏訪だった。まさか新幹線で隣の人に痴漢をされました、など言えるはずもなく、間違えて噛んでしまったのだと適当に取り繕っておいた。御堂はあまり納得していなかったが。初対面ではあるが、彼の洞察力はかなり鋭い、と思う。
展示会が始まる前にトイレに来て改めて確認をしてみると、血は止まっていたが傷になった部分が紫色に腫れてしまっていた。こんな顔で、商談の場に立つのが申し訳ない。
「あっ! お兄さん、さっきは熱い噛み痕をどうも♡」
「えっ……んむっ!?」
少しでも冷やせば落ち着くだろうかとハンカチを濡らそうとすれば、急に後ろから抱きつかれて口を覆われる。鏡越しに見れば、先ほど新幹線で隣にいた男性だった。先ほどは座っていたからわからなかったが、身長も体格も、三神峯よりひと回りも大きくて簡単に振りほどくことができない。
「へえ、お兄さん、三神峯さんって言うんだ。ごめんね? 俺のせいでかわいい唇に傷つけちゃったね」
「ん、んぅ……」
治してあげる、とべろりと唇を舐められる。男性の舌が固く結んだ三神峯の唇を割って口内に入ろうとするのを必死に拒んだ。本当に気持ち悪い。
「っふ、あっ……!」
「御開帳」
「ん、ふ、んむ……っ」
最初のコメントを投稿しよう!