ep.8

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(営業部のフロア、初めて来たかも)  営業一課の入るフロアでエレベーターを降りると、研究課とはまた違った雰囲気を感じた。  白衣を脱いで来ればよかっただろうか、エレベーターの前ですれ違ったスーツをしっかりと着込んだ営業部の社員の物珍しげな視線に三神峯は思う。滅多なことがない限り営業部の社員と会うことがない研究職だから、珍しそうに見てくるのも仕方がないだろう。 「営業一課ってどこだろう、案内図見てくればよかった」  ここのビルはワンフロアがとにかく広く、いくつもの課が入っている。研究課のフロアは研究室も備えているため、基本的にワンフロアに一つの課しか入っていないが、営業部ともなればそうではないようだ。営業一課のオフィスを探しながらフロアを歩けば、ちょうどフロアの中央部分に半個室に仕切られた打合せスペースが目に入った。 (そっか、営業部でも外に行くだけじゃなくてここで打合せすることもあるのか)  研究課のフロアでは見ることがない設備に興味が湧いてくる。今の時間だからこそ人がいないが、きっと昼間はここでたくさんの社員が打合せをするのだろう。御堂の仕事を垣間見れた気がして、少しだけ嬉しくなった。 「あれ、三神峯さん!」 「わあ、諏訪くん……」  営業一課と書かれたプレートが目に入ったとき、突然オフィスから社員が出てきて三神峯は足を止めた。オフィスから出てきたのは諏訪で、諏訪は三神峯を見ると嬉しそうに声をかけてきた。 「どうかしたんですか? 珍しいですね!」 「御堂さんに用があって。……いる、かな」
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