ep.8

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「それだけ景がボロボロなのと、俺を信頼してくれてる証拠。俺はむしろ嬉しいよ。それだけ俺を頼ってくれてるんだから。抱え込んで壊れちゃう前に、どんな些細なことでもいいから俺に話してよ」 「っ……ごめん、ごめんね……」  声を震わせる三神峯の頭を撫でながら御堂はどうしたものかとため息をつく。もちろん、三神峯の言動に呆れたわけではない。心身ともに精一杯のSOSを出している彼をどうすれば守れるのか、必死に頭を巡らせていた。 「……景、明後日の土曜日って空いてる?」 「? うん、一応空いてるけど……」 「じゃあ、一緒に出掛けない? 体調も思わしくないだろうし、もちろん無理にとは言わないけど」  たどり着いた答えは、三神峯と休日を過ごすことだった。  これまでずっと、毎日激務に追われている三神峯を休日に連れ出すのは申し訳なく思って控えていたし、これが最善の策とは思えない。ようやく待ちわびた休日に連れ出したらかえって彼を疲れさせてしまうのではないか。そんな思いは拭えなかったが、これ以上弱っている三神峯を一人にさせたくなかった。 「……行きたい。体調は大丈夫だから」  御堂の言葉に、三神峯は肩から顔を離し、ふわりと表情を明るくさせてそう頷いた。嬉しい感情と、安心したような感情が混じった表情だ。安堵した御堂は三神峯の頬を撫でて、優しく微笑む。 (かわいい、離したくない……) 「ん、一緒にスマホ買いに行こうか。11時半くらいでいい? 景の家に迎えにいくよ」 「えっ、それは申し訳ないから俺もどっかまで出るよ。家の場所だって……」 「いいの。俺がそうしたいんだから。この前送ったから覚えてるよ。部屋番号教えて」  恋人を迎えに行くのは当然でしょ、と続ければ、三神峯は申し訳なさそうにしていたが諦めたように口を開いた。
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