ep.9

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 エレベーターの中で、御堂の視線に気づいた三神峯が不安げに御堂を見上げた。そんなに心配をしなくても三神峯の姿恰好に変なところなんてあるわけがない。そう言おうと口を開きかけると、三神峯は目線を落として言葉を続けた。 「朝、持ってる服で色々組み合わせを試してみたんだけどあんまりいい組み合わせがなくて……。俺、昔から私服女の子っぽいって言われるし」  たしかに三神峯の服装はどちらかというと女性寄りの服装だ。とは言えこの服装が三神峯に似合っていないわけではないし、体の線が細い三神峯はこちらの方が似合うと思う。御堂は三神峯の首の後ろで蝶結びにされている紐を結びなおして答えた。 「いや、変なとこなんてないよ。めちゃくちゃかわいいし、似合ってる」 「そう? よかった。和樹に言われるとかわいいって言葉でも嬉しくなっちゃうね。和樹も休みの日だと髪型のセットが少し違うんだね」  御堂の言葉に安心したのか表情を綻ばせた三神峯は、今日の和樹もかっこいいよ、と言いながらエレベーターを降りた。 (無意識でかわいいこと言い出すから困るんだよなあ……)  これまでずっと追い詰められたような、疲れ切ったような三神峯しか見ていなかったせいか今日は一段と幼く見えてしまう。軽い足取りで歩く三神峯の後ろを歩きながら、御堂は今日のプランを何度も思い返していた。 (それより、景が疲れないようなプランにしたつもりだけど大丈夫かな)  きっと彼は昨日も帰りが遅かったのだろう。楽しみで眠れなかった、なんてかわいいことを言っているが、やはり土曜日くらいは三神峯を休ませるべきではなかったかと葛藤が巡る。 「和樹、どうかした?」
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