ep.9

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「うん、自分の定期はね。仕事用ではカードで持ってるから、分からなくならないように定期はスマホに入れてるんだ」 「そっかあ、そんなことができるんだ。それも便利だなあ」 「便利だよ。逆にスマホ落としたり使えなくなったりしたら困るけど」  御堂自身、キャッシュレス決済の幅が広がった最近では支払いも全てスマートフォンで済ませてしまうことが多い。だが、もちろん便利な反面リスクだってそれなりに大きい。  それを伝えるとそれはそれで困る、と今度は怪訝な表情を浮かべた。 (ころころ表情変えちゃってかわいい) 「……スマホひとつで済めば便利だけど、俺のスマホなんてもう何にも反応しないから買い替えかなのかなあ」 「どうだろ……、機種によっては修理で済むかもしれないよ。景のスマホの機種って何?」 「EPhone8っていう機種。少し前の機種だけど」  到着した電車に乗り込んで、ドアに凭れながら三神峯は今まで使っていたであろうスマートフォンを取り出すと深くため息をついた。見れば彼のスマートフォンに目立った傷や汚れもなく、機種を見る限り数年前に発売されたものだ。そこまで古い機種というわけでもない。突然画面がつかなくなってしまったのだろうか、そう思いながらスマートフォンを手に取って眺めていると、三神峯が困ったように話を続けた。 「コーヒーこぼしちゃったんだよね。すぐに拭いたけど、熱かったしやっぱりだめだったみたい」 「あー、水没か。EPhoneだと水没したら難しいかもな」 「じゃあ買い替えかあ……。またEPhoneでいいかな」
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