ep.9

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* * * 「スマホ、設定してくれてありがとう」 「どういたしまして。音声アシスト、使ってみてね」  カフェでは半個室になっている、ソファのあるテーブル席に通された。おしゃれな内装とゆっくり話ができそうな半個室の席に三神峯は大層喜び、こんなおしゃれなカフェに連れてきてくれてありがとう、そう三神峯は笑った。喜ぶ彼を見るのは何よりも嬉しくなる。  御堂が昼食にと頼んだのはスープパスタだった。トマトとバジルのスープパスタは定番の組み合わせではあるものの、スープが魚介ベースだったためか飽きが来ることがなくかなり美味しかった。さすがは腕の立つシェフがいると言われているほどだ。 「それにしても音声アシストってすごいね。声だけで和樹に電話かけられるんだ」 「いつでもかけてきてよ。ね?」 「ふふ、嬉しいなあ」  空いた皿を下げていく店員に礼を言って、三神峯の手元のあるティーポットとカップに目を向けた。彼が注文したハニージンジャーティーはまだ少しだけカップの中に残っている。  メニュー表を広げたとき、悩んだ末に三神峯はハニージンジャーティーしか頼まなかった。昼食を兼ねたつもりだったのでせめて軽食を頼まなくてもいいのかと尋ねたが、彼は大丈夫だと言って首を横に振った。食べたいんだけど、ごめんね、と申し訳なさそうな顔をした三神峯にそれ以上追及することはなかったが、何となく引っかかっていた。
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