ep.9

21/28
前へ
/192ページ
次へ
「これ以上無理させられない。ごめん、無理に連れ出してごめんね」  何度も謝る御堂に申し訳なさを感じて、三神峯は俯いて御堂の腕を掴んだ。  せっかくデートに誘ってくれて、今日のプランまで考えてくれたにもかかわらず、迷惑ばかりをかけてしまう自分が本当に情けなかった。こんなことになるなら我慢をする前に早く伝えておけばよかったとも思った。  少しの沈黙のあと、俯いた三神峯を宥めるように御堂が優しく問いかける。 「立てる? ここじゃ少し目立つから、ちょっと別のところで休んでから帰ろうか」 「ううん、もうおさまったから大丈夫だよ」 「よかった、でも心配だから」  安心したように表情を緩めた御堂が立ち上がろうとする三神峯を支え、その手を握って歩き出した。三神峯よりひと回りも大きい手は、存在を確かめるかのように強く握られている。 「倒れたら大変だから、俺の手、離さないでね」 (――……震えてる……?) 「かず……」  握られた手がわずかに震えていることに気づいたが、見上げた御堂の顔が険しくてそれ以上追及することができなかった。それだけ心配をかけさせてしまったのだ、いくら三神峯に向ける表情ではそう見えなくとも、御堂が怒っていたとしても無理はない話だ。  御堂の手を握り返して、その半歩後ろをついていくように歩いた。 「……どこも埋まってるか。買い物の荷物置くだけなら早く離れて欲しいよなあ」  商業施設内をしばらく歩き回ったが、土曜日ということもあって施設内の共有ベンチはすべて他の利用者で埋まっていた。困ったように、少し苛立ったようにため息をついた御堂に慌てて三神峯は口を開く。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1510人が本棚に入れています
本棚に追加